出演? | はぐれ国語教師純情派~その華麗なる毎日~

はぐれ国語教師純情派~その華麗なる毎日~

国語教師は生徒に国語を教えるだけではいけない。教えた国語が通用する社会づくりをしなければ無責任。そう考える「はぐれ国語教師純情派」の私は、今日もおかしな日本語に立ち向かうのだ。

 夕方、テレビのローカル番組を観ていました。

 

Aアナ「さて、みなさんにご報告がございます。本日をもって、Bアナウンサーの本番組へ

の出演が最後となります。Bアナウンサーからご挨拶がございます。Bアナウンサー、お願いします」

 

 その時私私は腑に落ちない思いに囚われました。

 

『え? アナウンサーがテレビに出ることを「出演する」って言うかな?』

 

Bアナ「私は、今日で〇ジダスへの出演が最後になります。今まで、たくさんの方に支えら

れ……」

 

『あ、自分でも出演していたと思っていたんだ』

 

 若い女性アナウンサーは涙ぐみ、スタジオには温かい拍手が響き、花束の贈呈が行われ、感激に盛り上がっているようでした。そんな中、大変申し訳ないのですが、私はさらにこのことを考え続けていたのです。

 私もテレビに出ていたことがありました。パネラーとして意見を言ったり、討論をしたりしたのです。でも私は、もし誰かに、

 

「○○さん、テレビに出たんですか?」

 

と尋ねられたら、

 

「はい、出ました」

 

と答えると思いますが、

 

「○○さん、テレビに出演したんですか?」

 

と尋ねられたら、答えに窮します。

 

「いやあ……」

 

とか何とか言って、うやむやにしてしまうと思います。

 このこと、ついには気になって、スマホで「出演する」の意味を調べたりさえもしたのです。

 

出演する

 A辞書  演劇・映画・テレビなどに出て演技をすること。

 B辞書  芝居、映画、演奏会などに出て、演技、演奏などを行うこと。

 

『やっぱり!! 私は演技も演奏もしていないから、出演はしていないなあ。アナウンサーだって同じでしょう?』

 

 さらに調べていくと……。

 

 C辞典  舞台や演壇に立って人前で演技をしたり講演をしたりすること。また、映画やテレビ、ラジオに登場すること。

 D辞典  映画・ドラマ・舞台などでは、その作品に出て演技することをいい、テレビ番組やラジオ番組などでは、その番組に出て仕事(求められる役割)をすることをいう。

 

『むむむ……、これだと出演したことになっちゃうなあ。言葉の解釈は広がっていくんだよなあ。そうかあ、私はテレビ出演をしていたんだ』