2024/01/14
台湾総統選、民進党の頼清徳副総統が初当選…勝利宣言で「中台関係の現状を維持する」
台湾総統選挙
 【台北=園田将嗣、田村美穂】台湾総統選は13日、投開票が行われ、与党・民進党の 頼清徳ライチンドォー 副総統(64)が、最大野党・国民党の 侯友宜ホウヨウイー 新北市長(66)台湾民衆党の 柯文哲クォーウェンジョオー 前台北市長(64)を破り、初当選した。有権者は頼氏が掲げる中台関係の「現状維持」を選んだ。中台統一を掲げる中国が反発し、台湾海峡を挟み緊張が高まる可能性がある。
 台湾の中央選挙委員会(選管)によると、頼氏の得票数は558万6019票で、侯氏の467万1021票、柯氏の369万466票を上回った。有権者数は約1950万人で、投票率は71・86%だった。頼氏は5月20日に総統に就任する。総統の任期は4年で、2期まで可能だ。1996年に総統選の直接選挙が導入されて以来、同一政党が3期(1期4年)連続で政権を担うのは初めて。台湾の独自性を強調する民進党政権の継続は、中台は別だと考える「台湾人意識」の定着を示した。頼氏は自身を「実務的な台湾独立工作者」と称したことがある。選挙戦では「独立」色を封印し、 蔡英文ツァイインウェン 政権が進めた中国との統一でも独立でもない「現状維持」路線の継承方針を示したことで、有権者の不安感を和らげた。
 頼氏は今後、中国との対話の糸口も模索する考えだが、対立局面の打開は難航しそうだ。中国政府の台湾政策担当部門は13日夜、開票結果を受け、「民進党は決して主流の民意を代表できない」とする談話を発表した。「今回の選挙が両岸(中台)関係の基本的枠組みを変えることはできず、祖国統一の大勢を妨げることはできない」と主張した。
 中国側は今後、台湾周辺での軍事演習を頻繁に行うなど圧力を高める可能性がある。頼氏は、米国との安全保障分野などでの関係強化をさらに進め、日本や欧州とも連携を深めて中国に対抗していく方針だ。一方、侯氏は対中融和姿勢を掲げたが、中間層の支持が広がりを欠いた。柯氏は昨秋、侯氏側との総統候補の一本化協議が決裂後、失速したとみられていたが、予想外に健闘した。
 選管によると、13日に行われた立法委員(国会議員、定数113)選は、国民党52議席、民進党51議席、民衆党8議席、無所属2議席となった。立法院では民進党は過半数を割り込み、第1党も国民党に譲り渡した。
台湾総統選確定票
頼清徳氏 5,586,019(40.05%)
侯友宜氏 4,671,021(33.49%)
柯文哲氏 3,690,466(26.46%)
(台湾・中央選挙委員会確定。カッコ内は得票率)
  頼清徳氏  1959年10月、台北県(現・新北市)生まれ。台湾大学卒、米ハーバード大大学院で修士号を取得。内科医として勤務後、憲法改正機関「国民大会」(廃止)の国民代表、立法委員(国会議員)、台南市長、行政院長(首相)を歴任し、2020年から副総統。昨年1月から民進党主席。

2024/01/14 読売
台湾総統選、中国の「介入」続発…里長ら30人を山東省に招待・高級レストランで会食

 【台北=園田将嗣】13日投開票の台湾総統選・立法委員(国会議員)選では、中台統一を主張する中国が介入する例が相次いで発覚した。中国への対抗姿勢を続ける与党・民進党の追い落としを図った模様だ。

 台湾検察当局は5日、中国から選挙資金の提供を受けて選挙活動を行ったなどとして、立法委員選に出馬した無所属の女性候補者の身柄を拘束した。

 発表によると、女性候補者は昨年4月以降に複数回、中国を訪問した。中国の対台湾工作機関の人物から、選挙に出馬して政治に関する情報を提供する見返りに、100万台湾ドル(約500万円)以上を受け取った疑いがある。選挙資金の授受には暗号資産(仮想通貨)が利用され、事案の発覚を免れる目的があったとみられる。

 地域の有力者を利用し、投票行動に影響を与えようとする動きも目立った。

 別の台湾検察当局によると、中国の工作機関の人物と交流があった台湾北部・基隆市の里長(町内会長)は昨年11月下旬、中国側の招きを受け、他の里長ら33人を連れ、5泊6日で中国山東省を旅行した。

 参加者は旅費の一部を支払ったが、往復の航空券代よりも安く、航空券との差額は中国側が負担した。参加者全員に1100人民元(約2万円)も支給され、実質的には無料の招待旅行だった。

 中国共産党幹部らが出席する高級レストランでの会食も用意された。幹部らは総統選を念頭に「台湾独立を主張する政党を支持しない」「両岸(中台)の交流を回復する政党を支持する」ことなどを求めたという。

 台湾外交部(外務省)の呉●燮(ウージャオシエ)(●は「金」偏に「利」の右側)外交部長(外相)は「今年は世界で40以上の重要な民主選挙が行われるが、中国が台湾の選挙への介入に成功すれば、その経験を生かして他国の選挙にも介入するだろう。台湾はその最前線にいる」と話している。

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*野党の得票数を数えれば、野党候補の方が多いから、統一候補に絞られたら結果はわからなかっただろうが、不正の無い選挙がオッ粉われることが大事だ。

民主主義も現在、いろいろと揺らいでいる。アメリカのバイデン誕生に見る選挙の大掛かりな不正(疑惑)が、正されない限り、アメリカはこれから覇者でいられるかわからない。アメリカ自体が、中国のように変わることもある。古代ローマ共和国が、皇帝制に変わったように、ありえるのだ。古代ギリシャが、ポリス制度を保ちえたのと、ローマに征服されたのは、いかなる事情によるか、などと考えてしまう。

「資本主義の先」が議論になるけれど、むしろ民主主義の問題を考えるべきかもしれないですね。

民主主義の原理・正当性とはいかなるものかか。むしろその議論が欠けているかもしれない。

 

一つの理屈として、「資本主義」と言うのは「貨幣経済」であって、実物経済以外に、貨幣を使わない経済システムが考案できれば革命的だろうが、経済システムにおいてもっと合理的なシステムが、貨幣経済で、貨幣を廃止して成り立つシステムが見つかれば、または発明されれば、資本主義に代わる合理的経済システムが成り立つかもしれないが、共産主義も社会主義も、貨幣経済に依拠するならば、資本主義に代わりえない。

だから、「資本主義」が問題であるのではなくて、「政治システム」に問題があるのだ。

「富の分配」とか「資源の配分」とかに権力が関われば、資本主義はシステムを危険にさらすのだ。それが中国やロシア、北朝鮮、アフリカや中近東、アジアや南米の『政治的資本主義』の国になる。

 

台湾㋔問題に話を戻すならば、台湾が民主主義を守れるならば、国の発展の可能性は示せるだろう。今世紀には共産主義を名乗る、またはその流れを汲んで、専制的政治支配をつづける国は、経済の発展は望めなくなると言える。ウェーバーが「支配の社会学」と言った『政治社会学』の分野も、まだ未完成だと言えるかもしれない。

安能 勉の中国史研究と言うか、書物から『権力とは何か』(岩波新書)があるが、私は最後の一節が真実だと思う。曰く、

《初めに、「権力」は「秩序」であった。そして究極にも、権力は秩序である。権力は「法」に保障されて存在し、秩序は「制度」によって支えられて存続した。制度は権力の表徴で、権力者はその表徴の具現である。単なる標識で「交通信号」のようなものだ。牛や馬を川に連れて行くことはできる。しかし水を飲めと強制することはできない。同様に交通信号は人や車の流れにゴー・ストップをかけることはできる。だが、その行き先を決めることはできない。権力はなんでもできる。しかし、すべてができるわけではない。

21世紀は、経済の世紀ではなくて、「政治の世紀」になるかもしれない。

要するに、どこが「安定した秩序を保てるかによって、経済の発展、衰退が決められる」と言えるかもしれない。マルクスが下部構造が上部構造を規定すると言ったが、それはない。経済・政治・社会の相互の関係でより複雑な歴史を形成する、つまり「社会動態論」として三つ巴の関係を言う。

社会というのは、「宗教的・伝統的・生活の仕方の変化」で、原因でもあり、結果でもある。その「歴史」を構成する三要因の絡み方によって変化するといってよいのではないかと思う。習近平が願うように、プーチンが願うように動くかと言えば、歴史は、その思いとは真逆の事態を生み出すことがある。静かにプーチンの死を待てば、ロシアは変わらざるを得ない。わずかな時間だし、中國も激動のはじまりかも。

ドラマ的な織豊時代が、わずか30年であり、ヒトラーの時代も10年だった。激動の時代と言えるものの、振り返るとわずかな時間なのだ。問題はその期間を耐えて、再興できる土台を持つか否かであろう。まさにレジリエンスが問われると言えるだろう。

台湾は、苦難を超えて『自立』可能な土台を築く時期にあると言えるでしょう。