持続可能性指標による国際比較 小 針 泰 介

http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8276395_po_075103.pdf?contentNo=1

表2包括的富指標の構成要素

(人的資本、人工資本、自然資本)及び健康資本の主な変数

分類 変  数        
人的資本 年齢・性別人口、年齢・性別死亡率、雇用、教育的達成(学歴)、雇用報酬    
       年齢・性別労働力等
人工資本 投資、資産の耐用期間、産出(生産量)の伸び、人口、生産性等
自然資本 化石燃料、鉱物、森林資源、農業用地、水産業
健康資本 年齢別人口、年齢別死亡率等
(出典) Inclusive Wealth Report 2012, p.31 を基に筆者作成。

 

各国の包括的富指標及び健康資本
国  名年包括的富指標
        100万$   内  訳  
       ...........包括的富指標..... 人工資本........ 人的資本   自然資本  .... 健康資本
日  本 2008 ... 55,105,917 .......14,956,6483 .....3,.9,531,806 ......617,463  .. 829,794,623

.................................(435,466)......... (118,193) .....(312,394)...... (4,879).. .. (6,557,327)
.....     1990..... 45,239,588......  10,477,873 ... 34,210,115 ... 551,600) ......804,473,747
...........      
 (370,054)).......  (85,708)...... (279,835) .....(4,512)....... (6,580,499
アメリカ ..2008 .....117,832,867....... 22,338,447 ......88,872,818.... 6,621,602 ...1,935,521,474

...................................(386,351) ..........(73,243) .....(291,397).....(21,711)..... (6,346,200)
...................1990 .......86,441,991......... 11,049,849.... 68,515,458... 6,876,684.... .1,575,703,370

...................................(341,211) ..........(43,617) .....(270,450)... (27,144)...... (6,219,740
中  国.. 2008 ......19,960,009  .... 6,159,399 .  8,727,850 .....5,072,761 .1,446,348,252
....................................(15,027) .....   (4,637)    (6,571)..  ..(3,819)...  (1,088,892) 
....................1990.......11,903,258...........  962,551......... 5,647,423..... 5,293,284... 1,221,152,645
...........       
 (10,394)  .....   (841)  .. (4,931)...   (4,622)..  (1,066,327)
イギリス. 2008 .....13,423,672 ..........1,494,113 .........11,822,300........ 107,260...... 335,698,193

..................................(219,089).......... (24,386)........ (192,953) ......(1,751)..... (5,478,969)
....................1990 ......10,718,589............. 858,527.......... 9,690,694 ......169,368........ 299,858,30

...................................(187,341)......... (15,005)....... (169,375)..... (2,960)....... (5,240,952)
フランス.. 2008...... 12,955,131.......... 3,215,9,574.........,068 982 ........165,081...... 302,615,437

....................................(208,623)............ (51,774)...... (154,190)..... (2,658) .....(4,837,159)
....................1990 ........9,153,530............ 2,120,057 .........6,882,044 .......151,429...... 269,378,375

...................................(161,414)........... (37,385)....... (121,359)..... (2,670)..... (4,750,249)
ドイツ .......2008....... 19,473,621........... 4,908,363...... 13,353,882.....1,211,377..... 411,500,848

....................................(236,115) ...........(59,513) ......(161,914)... (14,688) .....(4,989,385)
.....................1990...... 13,494,774 ........3,429,436............ 8,745,701.... 1,319,637 .  380,997,967

....................................(170,608).......... (43,357)....... (110,568)... (16,684)...... (4,816,778)
※括弧内の数値は一人当たりの包括的富指標(単位:US$(2000 年時))。
※括弧がついていない数値は(一国の)包括的富指標(単位:100 万US$(2000 年時))。

(出典) Inclusive Wealth Report 2012, pp.300-301, 306-309, 312-313, 326-329 を基に筆者作成。

 

 

 持続可能性は経済・社会・環境の三つの側面から分析が可能であり、多種多様な指標が独自の観点持続可能性を測定・評価している。ただし、評価の観点や評価方法が異なれば、その評価結果も異なってくるため、特定の指標が唯一絶対の評価となるものではない。
② 包括的富指標(Inclusive Wealth Index: IWI)は国連環境計画(UNEP)及び国連大学地球環境変化の人間・社会的側面に関する国際研究計画(UNU-IHDP)による指標で、人的資本、人工資本、自然資本の三つの観点から一国の富を評価している。日本(2008 年)全体として高い評価を得ている。自然資本を減少させていない数少ない国であり、森林の増加等がこれに貢献しているとされる。ただし、一国で必要な自然資本の大部分を輸入に頼っていることから、世界全体で見れば自然資本の減耗に寄与しているとの指摘もある。
③ 人間開発指数(Human Development Index: HDI)は国連開発計画(UNDP)による指標であり、寿命、教育、一人当たりGNI(国民総所得)の観点から評価している。日本(2012年)は86 か国中10 位である。個別の観点から見ると、特に寿命の評価が高い。
④ 持続可能性調整国際競争力指数(Sustainability-adjusted GCI)は世界経済フォーラム(WEF)によるもので、国際競争力指数に社会・環境の持続可能性を加味・調整している。日本の指数(2012-2013)は社会・環境いずれの面でも持続可能性を考慮しない国際競争力指数より高く、全体として比較的良い評価を得ているとされる。ただし、個別の観点を見ると、社会面においては不平等が、環境面においては二酸化炭素の排出が課題として指摘されている。
⑤ エコロジカル・フットプリント(Ecological Footprint: EF)は、グローバル・フットプリント・ネットワークによる環境への負荷に焦点を当てた指標である。日本の一人当たりの値(2008 年)は一人当たり生物生産力を上回っており、オーバーシュート(過剰収奪)の状態にあると言える。
⑥ 環境パフォーマンス指数(Environmental Performance Index: EPI)はイェール大学環境法・政策センターとコロンビア大学国際地球科学情報ネットワークセンターによるもので、環境について多角的に評価した指標である。日本(2012 年)は132 か国中23 位となっており、分野別に見ると環境衛生の分野の評価が高く、気候変動や漁業の評価が低い。・・・・・・

 

・・・・・・IWR 2012 では、1990年から2008 年までの各国の人的資本(HumanCapital)、人工資本(Manufactured Capital)、自然資本(Natural Capital)、及び健康資本(HealthCapital)を米ドル表示で数値化しており、これらの資本の算出に用いられる主な変数をまとめると、表2 となる(12)。包括的富指標は、表2に示される各変数から人的資本、人工資本、自然資本の三つを計算し、これらを合計することによって求められる(13)。この指標は主にストックに焦点を当てており(14)、GDP のようなフローに着目する指標とは評価の観点が異なる(15)。 表2 のうち、人的資本とは、知識、技術、能力といった人間の特質で、私的、社会的、経済的幸福に資するものを指す(16)。この人的資本の算出に際しては、変数として教育的達成(EducationalAttainment)が用いられているため、教育期間が長くなると一人当たりの人的資本の急増に繋がることが指摘されている(17)。また、人的資本で考慮される潜在価格(shadowprice)(18)は、労働者が生涯で受取る雇用報酬を基に測定されるため、その価格は年齢・性別人口や労働参加率、出生率、死亡率など多様な人口変動要因に影響され得る(19)。
 他方人工資本とは道路や建物、港湾、機械、設備等であり、国民所得勘定や国際機関が「投資」と言う場合、通常はこの人工資本の集積を意味する(20)。人工資本の算出にあたっては、継続記録法(Perpetual Inventory Method: PIM)(21)が用いられている。継続記録法では、初期値が分かれば、それ以降の計算は容易であるが、どこに初期値を設定するかが難しい。この点について、IWR 2012 では調査対象期間の誤差を最小にするため、1970 年のデータを初期値とし、減価償却率を7% として計算したとしている(22)。 自然資本とは、生物か非生物かを問わず、自然界に属するもので人間に幸福(well-being)を提供しうるもの全てを意味する(23)。具体的には、自然資本の算出は森林、漁業、化石燃料、鉱物、農地の5 項目を取り上げ、1 単位当たりの市場価値を割り出し、これに利用可能な量をかけることで、その額を計算する(24)。
 健康資本は個人の寿命を測定することで得られており、人口の年齢別構成や死亡率が重要な変数となる(25)。先述の人的資本と健康資本との関係を見ると、人的資本が教育に焦点を当てているのに対し、健康資本は寿命に焦点を当てているとされる(26)。

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この取り組みは最近になってはじめられたもので、今後さらに重要な指標となるように国連で取り上げてもらいたいものだ。

 

この小針氏の解説レポートは、その内容が、特に地球環境の維持に多くのウェイトがあると思う。世界の関心が、まさに自然破壊、環境汚染にたいして厳しい目を向け始めたと言うことだろう。


エコロジカル・フットプリントは環境への負荷に焦点を当てた指標である。2008 年のデータを見ると、日本の一人当たりのエコロジカル・フットプリントは4.17gha であり、「世界中の人が平均的日本人と同じように生活すると、2.3個の地球が必要になる」(ものとされる。

 

この指摘には衝撃を受けた。

 

 

エコロジカル・フットプリントと生物生産力を対比すると、日本のみならず、世界全体についてもエコロジカル・フットプリントが生物生産力を上回っており、オーバーシュート(過剰収奪)の状態にあると言える。

 

 

中国の経済発展が、資源をめぐる争奪行為のようで、地球環境にも配慮がない。そのことは、GDPではなく、このような指標で「富」を測定することは意味がある。

 

中国はGDPでアメリカに迫る勢いを見せていたが、この表に寄れば、一人当たりの富に換算すれば、とんでもない差がある。

日  本 2008 ... 55,105,917  中  国.. .19,960,009 
.................................(435,466)........ ..................(15,027)  

なんと1人当たりだと29倍だし、総額でも2.7倍なのだ。中国は、2008年、9年がピークでその後は成長も後退し始めている。ここでいう人工資本が縮小するし、自然資本も環境破壊の進行で数値も悪くなると言える。量的拡大がどこまで継続するか疑問です。

中国は1990年と2008年の比較で自然史品が減少しているのだ。

つまり、人工資本を増やしても、自然資本を犠牲にしていることがわかるのだ。

 

中  国.. 2008 ......19,960,009  .... 6,159,399 .  8,727,850 .....5,072,761 .1,446,348,252
....................................(15,027) .....   (4,637)    (6,571)..  ..(3,819)...  (1,088,892) 
....................1990.......11,903,258...........  962,551......... 5,647,423..... 5,293,284... 1,221,152,645
...........       
 (10,394)  .....   (841)  .. (4,931)...   (4,622)..  (1,066,327)
  総額        1.67      6.40
    1.54    0.95    1.18 

  1人当たり    1.45      5.75    1.33    0.83    1.02 

  伸び率 

 

 日  本 2008 ... 55,105,917 .......14,956,6483 ....3.9,,531,806 .......617,463  .. 829,794,623
.................................(435,466)......... (118,193) .....(312,394)...... (4,879).. .. (6,557,327)
.....     1990..... 45,239,588......  10,477,873 .......34,210,115 ... 551,600) ......804,473,747
...........      
 (370,054)).......  (85,708)...... (279,835) .....(4,512)....... (6,580,499
  総額        1.21      1.42   1.15    1.12     1.03

  1人当たり     1.17      1.37   1.12    1.08     1.00 

 

 1990年から2008年まで、日本はバブル崩壊後の停滞期に入り、韓国や中国は日本をさげすむような態度で接してきた。反日を国是にしたような動きを明確にしてきた。しかし、この数値をみれば、人工資本の投入で支えていたことはわかる。問題は中国も韓国も日本のように耐えられるかと言うことだ。

中国の経済成長が人工資本への増大であることがはっきりわかるけれど、人的資本の伸びは大きくないのが問題だ。自然資本が減少していることが、今後の経済の動向は安易ではないと思えるのですがね。

 

この指標で包括的富で日本はアメリカを抜いて一番の数値が出ている。

ただこれをどのように見たらいいのだろうか。

この指標は2年ごとに出すと言う。これは2012年のものであるから、2014年が出されてもいいのだが、来年になると出るとまた面白いのですが。