人民網日本語版822日「中日関係は「政冷経熱」から「政冷経涼」に変化」とだして記事を掲載。

中国サイドの現状認識。馮氏(?)の言葉を借りて以下のように見ている。

<日本国内の平和主義勢力は依然健在だと私は考える。まず、釣魚島(日本名・尖閣諸島)問題だけで日本国内の平和勢力と非平和勢力との線引きをすることはできない。①釣魚島が中国に属することを認めない、あるいは釣魚島係争の存在を認めない勢力=非平和勢力というわけではない。②釣魚島問題は中日関係の全てではないし、日本の民衆は日本政府に煽動されやすい。④歴史認識問題において日本国民の相当数は今も、日本がかつて中国を侵略したことを認めている。周辺国との関係を変えるよう求める声も小さくない。⑤およそ7割の民衆は周辺国との関係を変えるよう求めている。>

①非平和勢力と平和勢力という二分法。②扇動される日本国民、③侵略の認知、④関係改善を7割の国民が望む。という認識だ。

第一に、非平和勢力と平和勢力という対立勢力を定義して、自国に有利な勢力を<正義> とする論法は毛沢東が使い古した論法だ。②の認識、日本国民は軍国主義者に<扇動>されて戦争に突入したという論理が透けて見える。<扇動>されるのは国民が自立していないことで、ドイツも日本も<扇動>されて戦争に入ったわけではない。むしろ自覚的に戦争に加担したといえる。<扇動>できるのは教育のない、自己判断のできない民衆である。「共産党は民衆を指導しなければならない」ので<扇動>するのは中国である。④この認識は肯定 する。概ね日本人は当時の<文明国>の流儀に従ったという認識はある。⑤の中国や韓国との関係改善を70%の国民が望んでいたら、阿部内閣は総辞職もので、支持率が低下しているだろう。内閣が安定しているのは、国民がその意思を表明しているからだ。それは主権在民という制度が確立されていて、政府が国民の監視下にあるという制度で、それを中国は理解できないのではなく、理解しないだろう。党はすべての人民と文化を指導する役割があるという前提だからだ。

ここで問題なのはこのような政治状況の欺瞞的な認識を人民に押し付けておいて、中日の経済関係を論じるのだ。

<中日関係はすでに小泉政権期の「政冷経熱」から「政冷経涼」へと変化した。中日関係の影響を受けて、日本企業は次第に中国から東南アジアへ移転している。これには当然、中国の人件費上昇という要因もある。日本は対中輸出が輸出全体の約20%を占めるのに対し、中国は対日輸出が輸出全体の10%を占めるので、①対日経済制裁の発動は「敵を一千殲滅、わが方の損害は八百」と考える人がいる。こうした見方は無意味だ。

1に、分母をGDPにして見た場合、両国の相手国への輸出はいずれもGDP2.4--2.5%前後を占めるが、中国のGDP成長は輸出への依存度が比較的高い。第2に、日本の対中輸出は産業チェーンのミドルエンド、ハイエンド製品が中心だが、中国の対日輸出製品はローエンド製品が中心だ。また、経済モデルの転換段階にある中国は日本からの部品、機械設備輸入を必要としている。第3に、日本企業の撤退によって中国の経済減速圧力は一段と強まる。4に、影響を受ける日本企業は軍需産業に転向する。安倍氏の武器輸出三原則の緩和、軍事技術輸出の拡大政策によってこうした企業は補償を得る。したがって、②中日の経済貿易関係から見て、中国の損害は日本より小さいわけではない。日本側は、一部の民営企業を除けば、多くの日本企業は損失を補うことができる。(編集NA)>



政治的論調に比べるとかなりシビアーな認識であるといえる。①の日経済制裁は無意味だという認識。その理由が4つ上げている。その中で「日本企業の撤退」が中国の経済減速をもたらし、よく意味の分からないところだが<影響を受ける日本企業は軍需産業に転向する>と飛躍する。中国との関係で日本の受ける影響は少ないと言う認識を持ちながらなんでそこへ行くのか疑問に思うけれど、これはそれを心配するという意味だろう。

結論的に②で文章を入れ替えるとこうなる。

日本側は、多くの日本企業は損失を補うことができるが、中国の損害は日本より大きい。>という言い方になる。

日本の企業が総力を挙げて軍需産業に向いたら怖いという本音を語っているようだ。


平和勢力を持ち出して、この勢力と強調することで日中の改善を図りたいというのが本音だろう。それは国内の経済情勢の地殻変動が起こりつつあるという前触れでもあるだろう。また平和勢力の筆頭に鳩山の名前が他の記事に出てくるけれど、もはや日本では地に落ちた偶像でしかない。中国は日本とのパイプを全く失った。

いままでのパイプを認めていた国民の意向が変わったのだ。それを読み切れていない。社民党の衰退こそ、その真実を語る。日本共産党はもはやお飾りにすぎず、その実行勢力にはなりえない。国民の息抜き装置だ。共産党新聞の購買者巣数の減少がそれを語る。選挙のおりの安全弁であり、また民主主義的様相をカモフラージュする役割(茨木県知事選挙の立候補者は6期目を目指す現職と共産党候補だけ)を果たす。

中国が期待する平和勢力と非平和勢力=軍国主義者のレッテル張りは、中国人民をだませても日本国民をだませるわけではない。この統治される側の個々の人民と国民のレベルの<差>が問題であって、習近平が中国夢を語り、その偽りの夢に酔いしれている人民を夢から覚ます作業をこれから行うとしている。それが毛沢東思想への回帰であり、共産党の転換論なのだ。最近の人民日報や人民論壇に<共産党の転換は急務>という論文が目立ち始めて、人民の指導を始めようとしている。次にそれらの記事を紹介する。

日本の国民は「政冷経涼」を冷静に見ており、その結果、中国熱が冷めて東南アジア諸国やインド、アフリカなどへの視野を得た。

中国への思い入れが強すぎた分、反日運動や尖閣諸島問題で熱を冷ましてくれたことで、日本は本来の路線に、未来の戦略を開くことができた。問題は中国のこの後の歪の渦巻きにまき込まれないようにすることだ。

日中貿易の内容を理解しているようだから、日本がアッセンブリー工場を他国に移転すれば貿易構造が極端に変わるのだ。中国夢は長く続きそうもない。それを中國人自身が感じ始めているように思える。

一人芝居というのはこういうことを言うのだろう。我々はただ傍観していればいい。