殻を破った日銀 | 経済あらかると

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 政治に翻弄された感はあるものの、日銀はようやく政策金利の引き上げに到達しました。政策金利を0.25%程度に引き上げ、あわせて国債買い入れ額も四半期ごとに徐々に減額して行くことを決めました。8-9月は月に5.3兆円、26年1-3月で2.9兆円まで減らす予定です。

 

 4月時点で展望リポート通りなら金利を引き上げてゆくと言っており、6月から追加利上げら出る予定が、岸田政権に「待った」をかけられ、秋まで先延ばしを覚悟していたのが、河野大臣、茂木幹事長から相次いで利上げを促す発言があり、岸田政権の権勢低下のなかで、今回利上げに踏み切ったようです。

 

 物価など経済的な条件はすでに整っていました。今回、国債の減額という「量的引き締め」を打ち出した時点で、利上げというカードも同時に切るのは、これまでの日銀の流儀から見ると難しいとみられたのですが、日銀はこの古い「殻」を破ったことになります。日銀は国債減額の「量的引き締め策」の色合いを薄め、利上げとダブルで武器を行使した印象を薄めたいようです。

 

 市場は発表直後、円高(151円台)、株安に反応しましたが、すぐに為替は153円台に戻り、株価はプラス圏に戻す場面もあり、今後の解釈が分かれているようです。3月のマイナス金利解除時に植田総裁が「しばらく緩和的な状況が続く」と述べたことから、追加利上げは限定的と見た向きが多かったようで、今回ももう利上げはないとみる人も少なくないようです。

 

 しかし、しばらく緩和的、というのは今後継続的に利上げしても、まだ実質金利はマイナスで、中立水準より低い、という意味で、追加利上げがないとは言っていません。

 

 なお、利上げを浸透させるために民間銀行の準備預金(必要準備を超える分)に0.25%の付利をします。準備預金を減らすためにも保有国債を減らしてゆかないと、利上げのたびに付利コストが日銀の財務を圧迫します。