コミュニケーションにおいて最も大事なことは、「ただ伝えたい、ただ教わりたい」という純粋な思いなのではないでしょうか。

 

他者とのコミュニケーションの中に純粋な思いがないのなら、それは単なる言葉という記号と音のやりとりでしかなく、そこに喜びはなくなってしまいます。だからこそ、何を伝えたいのかという思いが大事なのです。

 

 子供の頃の私たちは、純粋なコミュニケーションを誰に教わるわけでもなくできていました。自分の知っていることを周りの人にただ伝えたい、友達の知っていることを教えて欲しいからただただ聞く。これがコミュニケーションの原型なのです。

 

子供なので、伝える表現や教えてほしいと頼む方法は上手ではないかもしれません。しかし、それでいいのです。それがいいのです。コミュニケーションの初めの段階というのは、相手にどう伝えるかとか相手がどう受け取るかということは、必要ないのです。それらは、次の段階で学ぶことであって、初めの段階で自分の感情や相手の感情を間に入れてしまうと、一体何を伝えたいのかがわからなくなってしまうのです。

 

この一体何を伝えたいのかがわからないというのが、相手との距離の取り方や話すことがわからないというコミュニケーションにおける悩みの本質なのです。そして、何を伝えたいかということがないまま、相手の受け取り方や自分がどう伝えれば相手によく伝わるかということを考えてしまうので、相手とのコミュニケーションを難しくしてしまうのです。

 

そうしたことも大切なのですが、二の次なのです。相手の受け取り方は相手の問題なので、こちらが立ち入ることはできません。相手にどう伝えるかに関しては、色々な手法や技術が世の中に出回っていますが、それらが正しいと私は思えないのです。なぜなら、私たちが相手とコミュニケーションをする際に喜びを感じるのは、純な思いをやりとりできた時だからです。

 

決して、相手の話す技術に魅力を感じるわけではないのです。相手の伝えたいという思いを感じた時に、その思いが私たちの心の琴線に触れ、相手の言っていることがよくわかるという理解をもたらしてくれるからです。

 

子供が私たちに何かを伝えようとする時、言葉の使い方や伝え方は稚拙だったとしても、その話はよくわかるのです。何を伝えたいかがはっきりしているからです。ただ伝えたいという思いのまま話しているからです。

 

例え、ある人が話すのが上手ではなかったとしても、その人が伝えることに関して、「ただ伝えたい」という純粋な思いを持っていたなら、人にはそれがわかるのです。人にはその思いが伝わるのです。純な思いが人の心と心を結ぶ、これが本当のコミュニケーションなのです。

 

 大事なのは、子供のように相手に対してまっすぐにぶつかっていくことです。純粋な思いを持って「私はこう思っているんだよ」「その話面白いね。もっと聞かせて」と歩み寄ることです。そうすると、大人になるにつれて忘れてしまった、コミュニケーションの喜びを感じられると思います。そして、コミュニケーションについて思い悩むことは少なくなっていくのではないでしょうか。ここまで、読んでいただきありがとうございました。

 

神奈川県 丹沢大滝