園庭では、どのような育ちがある? 7:飼育動物、休憩や穏やかな活動の場所 | 心と体と学びをはぐくむ園庭を

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幼稚園 保育所 認定こども園の園庭を、子どもが伸びやかに豊かな育つ場所にしませんか?

こんにちは。園庭研究所の石田です。

今回は、飼育動物、休憩や穏やかな活動の場所について、ご紹介しますね。

園庭の各物理的環境でどのような子どもの育ちが見られるのかについて、先行研究で明らかにされていることについて、先日よりご紹介します。→園庭環境と子どもの育ち一覧

 

【飼育動物】

・動物との触れ合いによって分離不安が軽減されることや,友達との喧嘩時に気持ちを落ち着けるなど内面の安定化に効果があることが示されている。

・子どもが動物に直接語りかける機会が多く,コミュニケーションの発達を促すこと

や,自然に動物の周囲に子どもが集まって来るなど植物栽培とは異なる意味での「心の交流」が見られる。

・幼児が責任感をもって動物を育てている。また,動物飼育に対する保育者の懸念材料に「死の扱い」が挙げられることから研究者は,死を「命の大切さ」を考える機会と捉え,幼児の年齢にあった形での死の説明を提案している。

 

以上より,飼育動物に特有の育ちとしては,心の安定や責任感,動物や動物を囲む仲間との心や言葉の交流であることが示唆されています。

さらに,未就園児など地域住民にとっての意義についても示唆されている。飼育動物について「園庭開放時に飼育動物とのふれあいが見られる」と回答する施設が半数以上であり、研究者はその理由を,上記で挙げた飼育動物を通した心や言葉の交流によると考察し,地域に開かれた保育所における動物飼育の可能性を指摘している。

 

<参考文献>柿沼美紀・桜井富士朗・井戸ゆかり・高橋桃子 2001.「保育現場における動物飼育 ―江戸川区獣医師会「動物飼育実態調査」から―」/井戸ゆかり・桜井富士朗・高橋桃子 2002.「保育現場における動物飼育(第2報) : 動物飼育を通したコミュニケーション」/高橋桃子・桜井富士朗・柿沼美紀・井戸ゆかり 2002.「保育現場における動物飼育(第3報) : 江戸川区獣医師会「動物飼育実態調査」から福祉サービスの一環として」

写真:スウェーデン Utsikten就学前学校さま

 

【休憩や穏やかな活動の場所】

・園庭にデッキを設置したところ,子どもは「家の居間」として見立ててお家ごっこを始め,遊びを仲間と共有する姿が見られる。また,デッキ設置前は園庭でのごっこ遊びは長く続かなかったが,デッキ設置により,「遊びの拠点を持って遊ぶ面白さが園庭でも保障された」と研究者は述べている。

・室内と園庭の中間領域である縁側やデッキ,テラスといった半屋外空間でも,鬼ごっこや飼育動物と遊ぶなどの通過型遊びと,ままごとや玩具での遊び,おしゃべりなどその場でじっと行われる滞留型遊びが観察され,室内外をつなぐと共に,休憩や穏やかな活動の場となってることがうかがえる。

加えて園庭での取り組み自由記述(石田他, 2018)からは,デッキやテラス等の半屋外環境では,食事やゆったりとした活動,集い話すことが挙げられており,そこから得られる育ちも検討していく必要がある。

 

以上から,休憩や穏やかな活動の場所に特有の育ちは,拠点を持つことによってごっこ遊びなどにじっくり落ち着いて取り組むことや,空間や物を見立てるといった想像力や表現であることが示唆されています。

 

<参考文献>河邉貴子 2006.「園庭環境の再構築による幼児の遊びの新しい展開:―ウッドデッキの新設をめぐって―」/張嬉卿・仙田満・井上寿・揚熹微 2003.「幼稚園における半屋外空間に関する研究」/石田佳織・秋田喜代美・辻谷真知子・宮本雄太・宮田まり子2018.「園庭における環境構成と使い方の実態」

写真:千葉県 和光保育園さま

 

上記は、秋田喜代美, 辻谷真知子, 宮田まり子, 宮本雄太, 石田佳織 2019. 「園庭環境に関する研究の展望」『東京大学大学院教育研究科紀要』第58巻のⅤ章でまとめています。以下東京大学CedepHPからのダウンロード頂けます。http://www.cedep.p.u-tokyo.ac.jp//projects_ongoing/entei/

 

園庭研究所 代表 石田佳織

お問い合わせ: 電話:080-2381-8611  /  メールを送る

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【園庭や幼児と自然のについての著書】

園庭を豊かな育ちの場に:質向上のためのヒントと事例

園庭園庭全国調査に基づいて、園庭での保育・教育の質をより高めるための視点や工夫をご紹介しています。面積が小さな園や制約がある園での工夫や、地域活用の工夫もご覧いただけます。

園庭を豊かな育ちの場に: 実践につながる質の向上のヒントと事例
秋田 喜代美 石田 佳織 辻谷 真知子 宮田 まり子 宮本 雄太
ひかりのくに
 

森と自然を活用した保育・幼児教育ガイドブック

石田は以下を担当させていただきました。→第1章5「幼稚園施設整備指針と園庭調査を踏まえた屋外環境のあり方と自然」東京大学Cedep園庭調査研究グループ/第1章8「幼稚園教育要領等の5領域に合わせた先行研究」北澤明子, 木戸啓絵, 山口美和, 石田佳織

保育内容 環境 第3版

石田は第6章4節「自然環境と持続可能な社会」を担当させていただきました。