ゆうれい貸屋 山本周五郎③ | ゆづき24時 2nd

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「ゆうれい貸屋 山本周五郎

をYou TubeちゃんねるにUPしましたー。

解説、雑談は今回が最終回です。

 

 

六日め七日めと、客はしだいに殖えた。

十日めには七人もやって来たし、

さらに多くなるもようであった。
「当ったなあ、お染、見ろ、もうおめえ三両ちかく儲かったぜ」

 

 

てんとうむし

 

 
今回は地図はいらないかなと思いましたけど
やっぱり描きましたよ。地図を。
 
 
弥六の住んでいるのは、
江戸 京橋 炭屋河岸 の やんぱち長屋
 
京橋
現代で考えると、東京駅の目の前
江戸時代で考えても御城のすぐ近くですから、
いくら貧乏長屋っぽくても、場所的にはすごい。
 
図の、鍛冶橋御門呉服橋御門の間、
ちょっと上(西)辺りが
現在東京駅のあるところですね。
 
京橋は、当時
京橋川にかかる「京橋」って橋もありましたけど
(現在は橋はない)
どちらかというと、京橋って橋にちなんだ地名みたい。
具体的な町名ではなくて、地名ですね。
 
私の描いた地図だとわかりにくいんですが、
「京」の字のとこを縦に流れてるのが京橋川で
「京」の字の右下あたりに京橋がかかってる。
 
炭屋河岸って地名は
江戸時代の切絵図には見当たりませんでしたが
京橋の下(北)辺りに「炭町」って町名があるから、
そして炭町は京橋川に面しているようなので
その辺のことを言ってるんじゃないかという予想。
 
三十間堀町は、
お染がどこかから料理を運んできて
「三十間堀の田川から持って来たの」
と言ってるので、田川という料理屋か何かが
三十間堀町にあるという設定でしょう。
 
お話中に出てきた
「橋善」や「長寿庵」も、

橋善

新橋にあった天ぷら屋で

1831年創業 (2002年に閉店してるそうです)のお店。

長寿庵は蕎麦屋で、

1704年に京橋五郎兵衛町に開業したそうです。

「五郎兵衛町」は地図には書かなかったけど、

江戸の切絵図を見るとちゃんと地名が出ている。

 

こういう、ホントにあったことや店を

お話に取り入れてるの(平次もそうですけど)

面白いですね。

 

ゆうれい貸屋を開くに当って

お染さんが幽霊仲間に声をかけたら、

お岩さん平知盛さん
由比正雪さんお菊さんが集まってきた…

っていうのも面白い。

 

こういうとこがちょっと落語っぽいのかなと思ったり。

 

今回参考にした地図は

 

尾張屋版 江戸切絵図 築地八町堀日本橋南絵図

 

一応、目安として

日本橋、江戸橋、一石橋、

数寄屋橋御門、鍛冶橋御門、呉服橋御門などの名前を

書き入れましたが、その中で「西本願寺」

切絵図中に西本願寺とあったのでそのまま書いたけど、

築地本願寺の場所だよね…と思ったら

築地本願寺、京都の西本願寺の別院なんですってね。

 

 

てんとうむし

 

 

「うらめしや」

ってセリフは難しいですね。

 

そういえば、日常生活で「うらめしや」なんて

普段使うことってないな。

とあらためて思った。

 

怪談の中とか、昔話、ゆうれい話みたいなときに

口にしたことはあるんでしょうけど、

日常会話で使う言葉じゃないわけで。

 

幽霊だから、弱々しい?

…生きてる人間のような生命力、体力的な

力強さはないと思うのだけれど、

恨みや怨念のパワーって物凄いと思うんですよ。

そういう意味では、弱々しいだけではないと思うのですよ。

地の底から響くような

精神的には、物凄いパワーを感じるのだけど、どうでしょう?

 

ですからね、

お染さんの「うらめしやなあ」は相当悩みましたよ。

しかし、だからといって

前にちらと書きましたように

あんまり練習しちゃうと新鮮味がなくなっちゃうのですよ。

 

で、

まあ、それとともに

お染さん登場シーンと

お話後半のお染さん怒り心頭、浮気娘消える前、などは

この世のものでない、

弥六が住んでる世界とは次元が違う感じを出したかったので

エコー(リバーブ)かけるなどで処理しました。

まあ、舞台や公演などで

直にお客様の前で朗読する場合などがあったら

また違った演出になってくるのかもしれませんけれども。

 

以下少し、私の覚書です。

 

 

【今回かけたリバーブの数値】

初期設定 → お染さん登場シーン → 以降

ルームサイズ 25 →  56 →  25

プリディレイ 10 →  77 →  77

残響 65 →  79 →  65

ダンピング 50 →  100 →  100

トーンLow 100 →  30 →  30

トーンHigh 100 →  100 →  100

ウェットゲイン -1 →  -1 →  -1

ドライゲイン -1 →  -12 →  -1

 

 

 

てんとうむし

 

 

演じる側としては

こんなに難しいお話なのに、

たくさんの方が朗読されてるのはすごいなあ。

 

とにかく、お話が面白いのですよね。

読む、聴く側としては、わかりやすい。

 

ちょっとした昔話というか

市原悦子さん常田富士夫さんの語りで

聴こえてきそうなところもあったり。

 

「日が昏れて九時頃になると現われる。

(江戸時代なら戌刻半(いつつはん)と言いそう)

とか

「すぐに賃上げストなんか始めるわよ」

とか、現代風の言葉も多いので、

現代の人にわかりやすいし、とっつきやすいのかもしれない。

 

いや、しかし

声に出して読んでみると

これが難しいのですよ。

 

演じる側、演出によって

いろいろやり方が変わってきたり

違う印象になるかもしれないのですが、

そこはもう、好みや方針の問題でしょうかね。

 

 

気に入っていただけたら幸いです。

また、

それぞれお好みの朗読に出会っていただけてたら幸いです。


 

 

てんとうむし