銭形平次捕り物控 平次屠蘇機嫌(一)(二) | ゆづき24時 2nd

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銭形平次捕物控「平次屠蘇機嫌」

 

youtube朗読カフェチャンネルにて公開中されました。

今回は(一)(二)についての解説・雑談です。


youtube 銭形平次捕物控「平次屠蘇機嫌」



元日の昼下り、
八丁堀御組屋敷の年始廻り帰りの
銭形平次と子分の八五郎。
海賊橋を渡って、青物町へ入ろうと言うところで、
「旦那方の前じゃ、呑んだ酒も身につかねえ。
丁度 腹具合も北山だろう、
一杯 身につけようじゃないか」
という平次の言葉に、ガラッ八は眼をパチパチさせます。




てんとうむし



今回は 「平次屠蘇機嫌」
お正月らしいお話です。


今回は、珍しい出だしでしょうか。
何が珍しいって、平次が酔っぱらっている

だいたい、次の朗読に使う題材を選ぶ際には、
一度おおかた読んでみて当りをつけるのですが、
練習し始めてみたら、その難しいこと。

何が難しいって、
だから、平次が酔っぱらっている



一人で読む朗読だから、
会話文は或る程度、
誰が言ってるセリフなのかを意識する必要がある。
声色を使う表現はあまり良くはないと思うので、
なるべく喋り方や表現などで
差異をつけるようにしたい……
というわけで、
「銭形平次シリーズ」を朗読し始めて数年、
自分の中での「平次」のキャラクター、
「八五郎」のキャラクター、etc
それぞれ定まってきてはいる、
ような気もするのですが、
(あるいは常に変化し続けてもいる、ような気もする)
ここにきて、

「平次」 → (さらに) 「酔っぱらっている」

という表現に悩んだわけです。


単発で酔っぱらっている登場人物
(その話にしか出て来ないゲストキャラね)
が出てくる分には
そうは悩まないのですが、
「平次」が「酔っぱらってる」状態、
下手すると、
「誰だこりゃ!?」になるという…



ま、地の文もありますので、
誰が喋っているかは
何となくわかるとは思うのですが、
ま、平次が酔っぱらっているという状況も
珍しくて面白いので、
なんとなく楽しんでいただければ。






ネタバレ といえば ネタバレ注意 ですが、
(まあ、すぐにわかることなので、
バラしても差し支えはないかな…(^^; )
実際は、平次は
酔っぱらっている「フリ」をしているだけです。

そう考えると、
平次は演技もできるのだなあ。
すごいなあ。


ちなみに、
私が平次のセリフを読む(平次を演じる)際に
常に心がけているのは、
かっこよさよりも、
「平次の誠実さ」です。



てんとうむし



そういえば、
時代劇では、小柄で丸顔、
俊敏なイメージの役者さんが演じることが
多いような気がする 八五郎 ですが、
原作では 「顔が長くて大男」 の八五郎。

「何を言やがる。
危ねえのは手前の顎だ、
片附けて置かねえと、
俺の髷節に引っ掛るじゃないか」

という平次のセリフは、
八五郎が、平次より背が高い
ことがわかる一文ですね。

まあ、私が読む場合は
あまり大男ということは気にせずに、
八五郎の 気の良さ、元気さ、フットワークの良さ、
みたいなものを意識するようにしています。





では、またしばらく、
「平次屠蘇機嫌」 、お付き合いくださいまし。




海賊橋は、明治に入って海運橋と改称されて、
今はその場所に
「かいうんはし」と書かれた親柱が立ってます。
 
 

次回へつづく  猫あたま
 
 
 
 
 
 
 
(一)

【八丁堀御組屋敷】 はっちょうぼりおくみやしき
現在の東京都中央区八丁堀。
八丁堀に官舎があったことから、
町奉行所の与力・同心のことを
「八丁堀の旦那」などと呼ぶ。

【海賊橋】 かいぞくばし
日本橋川と、かつてあった楓川が合流するところに
架けられていた橋。

【腹具合も北山】 はらぐあいもきたやま
「腹が来た」とは、腹がへってきたこと。
「腹が北山」「腹が北野天神」などと
地名に掛けて用いることがある。

【活鯛屋敷】 いけだいやしき
大きないけすに公儀御用の高級魚を生かしておく
「肴役所(さかなやくしょ)」の俗称。
江戸橋広小路の一角。
現在の中央区日本橋一丁目、
江戸橋西詰めの北側あたりにあった。

【中食】 ちゅうじき
1日2食の習慣のとき、
朝食と夕食の間に軽くとる食事。
後には昼の食事。
日本はそもそも一日二食の習慣だった。
三食が普及したのは
江戸時代以降といわれていますが、
蠟燭や照明器具が発達して活動時間が長くなったため
お腹が空くようになったからとか
百姓や肉体労働者などから
一日三食の習慣が広まった、とか。
それでも上流階級の武士は、
一日二食にこだわった人も多かった、とかなんとか。

【浅黄色】 あさぎいろ
薄い黄色。
同音の「浅葱色」ごく薄い藍色とは、別の色らしい。

【鎌輪奴】 かまわぬ
元禄年間(1688~1704)に流行した衣類の模様。
「鎌」と「輪」の形と「ぬ」の字とを組み合わせたもの。
町奴などが用いたが、
のち、歌舞伎の市川家で用いるようになった。

【番頭】 ばんとう
江戸時代の商家の役職のひとつ。
番頭は、商家で、
使用人の内で最高の地位にあるもの。
10歳前後で小僧として住み込んで、
→ 手代 → 番頭 となる。

【小判】 こばん
小判一枚が一両。
一両は、今の相場にして5~13万円くらい。
当然、
「金は小判というものをフンダンに持っているんだ」
は、平次ジョーク。
「小判を一枚ずつも やりゃいいんでしょう」
も、八五郎ジョーク。

【唐臼を踏む】 からうすをふむ
両方とも一度にうまく運ばぬこと。
唐臼を踏むと、手前を踏めば向うが上り、
向うが下りれば手前が上ることから。

【小粒】 こつぶ
江戸時代に流通した
銀貨の一種・豆板銀(まめいたぎん)のこと。
小粒銀(こつぶぎん)、
小玉銀(こだまぎん)とも呼ばれる。
丁銀に対する小額貨幣として補助的な役割をもち、
僅かな目方の調整に用いられた。
また、西日本では
俗称「小粒」といえば豆板銀を指したが、
東日本では、
一朱判金、二朱判金、二分判金などの
小額金貨を指す場合もある。


(二)

【吐月峯】 はいふき
普通は「灰吹き」と書く。
この場合、タバコ盆についている、
タバコの吸い殻を吹き落とすための竹筒。
吐月峰(とげっぽう)。
なぜ、「はいふき」にこの字をあてるかという話は
こちら→「銭形平次捕物控 九百九十両(一)」

【廻礼】 かいれい
新年の祝詞を述べるために、
親戚・知人・近隣を訪問すること

【北の方】 きたのかた
公卿・大名など、
身分の高い人の妻を敬っていう語。
当然、八五郎が「北の方お待兼ねと来やがる」
と、お静を「北の方」と呼んだのは、
平次の言った「お屋敷」に掛けた言葉。
 
 
 
てんとうむし