過去問は全ての準備が終わってから最後の演習として解くものではなく情報源として活用すべきもの
夏本番を迎える8月の頃から、過去問に親しむようにしてみましょう。
昔のものから順に解くのでも良いですし、直近のものから、或いは去年のものをまず解いて最近の傾向を知り、その後に古い年代から順に遡って解くのでもいいでしょう。
8月はまだ早い、と思うでしょうか。
今回は、以前にも書かせて頂きましたが、再度過去問の活用についてまとめます。
過去問の活用方法については、一度入学試験を経験しないと、なかなかその重要性に気づくことがないと思われるからです。
過去問を全ての準備が終わってからの腕試しとして、最後の演習として解こうという人は多いと思います。
それまでは大切にして、触れずに取っておくのです。
しかし、このやり方は実力者のみに許された方法です。
なぜなら、最終的にどのレベルまで上がっていくことが必要かを知ることができて、そのレベルを確実に目指せる勉強計画を立て、その計画通りに勉強がこなせ、遅滞なく実力を上昇させることができる人のみが、最終的に過去問をやって実力を試し、入試に向けて微調整をするだけで合格を勝ち取ることができるからです。
普通はこのように順調にいきません。
特に多いのが、実際に受けてみたときに時間が足りなくなる事態です。
以前にも書きましたが、試験時間が足りないというのは、準備不足を白状しているようなものなのです。
そして残念ながら、このような人は少なくありません。
試験時間もわかり、どのような設問形式かも知っていて、難易度もわかっている筈なのです。
時間不足でした、などということは言ってはいけません。
時間不足になる典型的な具体例を以下に示してみます。
英語による例ですが、他の科目にも通用すると思います。
最近の入試英語の主要部分は長文読解が占めています。
これに対処するために、有名な参考書や問題集を使って複雑な構文や文法をこなし、難解な文章を読む練習を積んでいきます。
同時に長い文章を読む練習も行い、問題集もなんとか解けるようになった11月下旬、まだ長文対策の勉強は完璧ではありませんが、過去問を腕試しに解いてみました。
その結果、以前から過去問の長さは知っていましたが、実際に読んで解くとなると、わからない単語や構文も出てきて苦労することもあり、とても時間内に解くことはできなかったのです。
しかし、時間をかければ合格圏内に届きそうなくらいはできたので、なんとかなりそうだと思いました。
自分のやってきた勉強法は間違っていなかったと安心し、今まで通りの英文解釈の勉強や問題集を解くことを続け、漸くそれが終わった12月、さあいよいよ過去問に挑戦するぞと年代の古い順からやり始めました。
ところが、以前と同じように時間内に解くことはできず、目に見えて読解能力も上がっているようには思えないのです。
へんだなと、次の過去問にも挑戦しますが、結果は同じです。
英文を読む固有のスピードが入試レベルに達していないので、時間をかければそこそこ解けるのですが、設問一つ一つを殆ど秒殺しないといけない入試用の読解レベルには及んでいないために、時間内に解き終わることができないのです。
これではいけないと気づきますが、残念ながら少し遅かったのです。
読解のスピードを上げることは簡単なことではないからです。
いろいろ試してみたのですが、どうも旨くいかず、年も明けて焦りますが、なかなか上達しません。
まあ、でも時間をかければ解けるのだから、なんとかなるさ、と思って本番に臨みます。
しかし、やっぱり時間内には解けません。
本人にとっては、実力はあるのに、時間が足りなかったということになるのです。
採点する側から言えば、明らかな実力不足です。
読むのを早くしなくてはいけないということを、もう少し早く気づくべきでした。
英文解釈の参考書は短い文章で、難解なものを題材にしています。
それは、読むための公式めいたことや、文例を説明するためには、沢山の例文で多くのことを説明しなければならないからです。
いわば、理論の網羅編と言ってもいいでしょう。
それを完璧にこなしたとしても、長い文章を読む体力と読解力が養われていなければ、長文は読みこなせません。
しかも、英文解釈の参考書の例文は難しいものが多く、なかなか読了することができないのです。
そしてその分だけ、過去問をやる時期が遅れてしまうということになります。
ここに悲劇の元があります。
上の例では時間をかければ読める、ということにしましたが、一番危険なのは、時間をかけても読めないという状況になることです。
短い文章で、難解なものは読めますが、2ページ以上に渡る長文を読む読解経験がないと、なかなかこれに対処することができないからです。
秋も押し詰まった頃に初めて過去問の長文をやり、出来ないことに愕然として、それから対処しようとしても、最早タイムアウトに近くなっています。
このようなことにならないためには、十分対処できる時間があり、できないことがわかっても焦らない時期から過去問を解き始めることです。
遅くとも八月の中頃から過去問に親しみ始めるべきです。
いままでやってきた実力を試すために、過去問を最後までやらずに残しておく、などということは、実力者のみに許されたことです。
また入試の体裁が変わり、新しい対策が必要になることもあります。
過去問は腕試しという性格もありますが、それよりも実力養成のための情報源なのです。
出来る限り早期に情報に触れておくことは、誰もが認めることだろうと思います。
なぜか過去問を大事に取っておく受験生が多いのですが、むしろ活用しきって覚えてしまうくらいにした方がいいでしょう。
以上、英語の例で述べてきましたが、他の科目でも同様に考えるべき点は多いと思います。
是非、過去問に親しむようにして下さい。