黄金博物館
コロンビアにはとある名高い博物館があり、何かの拍子にその存在を知って以来「行きたい行きたいああ行きたい」と思い続けていたので、コロンビアに来たのは友人に会うためだけではなかった。
その博物館とは「ムセオ・デ・オロ」。
黄金博物館である。
首都ボゴタにあるこの博物館に展示されているのは、スペインがやってくる前に先住民によって作られた貴金属の製品や土器である。
この博物館の入場料には珍しく外国人価格が設けられておらず、コロンビア人と同じ金額(200円くらい)であったが、さらにありがたいことに日曜日はみな無料であった。
で、当然われわれは日曜の開館時刻に訪れた。
するとそこにはすでに行列ができていた。
みな考えることは同じである。
タダだと思うと待つのも全く苦ではない。
さて入館して地図を見ると、地下には企画展があり、メインの展示は地上2階と3階のようだ。
あまり人が多くないところから見ようと思い、まずは地下の企画展を観覧し、その後メインの展示室へと向かった。
そして、そこで、われわれは、これまで見たことのない黄金の芸術を見た。
双頭の鳥、黄金の針金でできたような人形、レース編みを思わせる優美なアクセサリー……。
それらが地域や役割ごとに分類され、ガラスケースの中から、見る者の度肝を引っこ抜くような輝きを放っている。
わたしはこの博物館に入る前から
「ここはすごそうやから1日で見終わるのは無理やで。
カメラの電池も集中力ももたんから、もっかい来よう」
と夫に提案しており、夫は「え〜1日で見終わるやろ」と不満げであったが、実際の展示を見ているうちに夫も納得したらしい。
結果われわれはここに3日間通った。
初日は人の多い日曜であるので全体をざっと見て終わり、残り2日でメインの展示を徹底的に眺めた。
同じ博物館に3日間通ったのはペルーのラルコ博物館以来であった。
メデジンのアンティオキア大学博物館ではコロンビアの土器の独自性にびっくりさせられたが、黄金もまた、土器と呼応するようにユニークな特性を持っているのだ。
以前ペルーを訪れたときは「アンデスを知るためにまたペルーに来るだろう」と思い実際に再訪したわけだが、わたしは今コロンビアにも同様の予感がある。
いつになるかわからないが、わたしはまたコロンビアに来る。
そして次はこの博物館で見た地域ごとの特性を理解し、年代を整理して、人々がどんなふうに、何を信じてこれらを作ったのか、近づいていくのだ。
わたしは装身具としての金にあまり興味がなく、「金」といえばゴールドよりもカネのほうが好きであった。
しかし今は言える。
金はおもしろい。
モチーフには信仰が、形には技術が、発見された場には当時の社会のあり方が凝縮している。
ブルガリアでもペルーでも黄金の製品を見て、そしてコロンビアでまた新たなおもしろさに出会った。
そして今は図録を読みながら少しずつ意味を肉付けしようとしているが、読めば読むほど心ひかれコロンビアから離れ難くなってしまう。
もうやめてくれ黄金、と言いたくなってくる。
*ムセオ・デ・オロ*
下の写真は黄金博物館で出会ったなかで特に気に入った遺物である。
これから図録を読み進めていけば、これらがどこでどんなふうに使われていたのかがわかるかもしれない。
図録で読んだ範囲で印象に残ったのが、金属加工のテクニックのひとつに「ロストワックス」という方法があるということ。
蜜蝋を使って型を作ったようだが、その蜜蝋は針のない蜂の巣から集められたものだとか。
メデジンで友人の兄の家を訪問したとき、庭に針のない蜂がいた。
昔の技術と現代がつながっているような気がした。
(クリスマスツリーに飾りたくなる)
(「バードマンの胸当て」とあったが、鳥だけでなく様々な動物がくっついており、シャーマニズムに関連した遺物は奥深い世界があるなあと思う)
(コロンビアはエメラルドの産地で、黄金博物館のすぐそばにエメラルド博物館もある)
(ウサギかと思っていたら、図録に載っていた似た形状の遺物には「ジャガー」と解説が付されていた。
いまいち納得がいかない)
(この優美な細工は本当にすごかった。
こうしたイヤリングが大量に展示されていて、この博物館とコロンビアの文化の厚みを感じる)
(夫が気に入っている「マッチョグマ」)
(顔にも身体にもボディペインティングがほどこされている。
後ろから見ると尻がプリッと突き出ていてたまらない)
(なんだろう、かわいいんだけど、なんかエラそうでムカつく)
(鳥をモチーフにした遺物は非常に多かったが、これは鳥土器の中でナンバーワンの愛くるしさ)