サンティアゴ・デ・コンポステーラ・前編【スペイン巡礼日記 #30】 | ハゲとめがねのランデヴー!!

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『深夜特急』にあこがれる妻(めがね)と、「肉食べたい」が口ぐせの夫(ハゲ)。
バックパックをかついで歩く、節約世界旅行の日常の記録。

 

聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへ

 

 

巡礼49日目、ついに最終日。

カミーノのゴール地点、サンティアゴ・デ・コンポステーラまで残り10kmである。

 

サンティアゴの宿がイベントによって高騰していたため、10km手前のアルベルゲ(巡礼宿)に2泊とったわれわれは、最後の1日だけ荷物を置いてサンティアゴまで歩き、バスで宿に戻ることにした。

 

前日買っておいたパンを朝食にし、7時40分、アルベルゲを出る。

 

初めてわれわれはバックパックを置いて、水や貴重品だけを持って歩き始める。

 

重力のくびきから解き放されたように自動的に足が前に出る。

坂道も息切れしない。

 

これまでわれわれは毎日何組もの巡礼者に抜かれ、歩くのがかなり遅いほうだった。

そしてそれは夫というよりわたしの問題であったので、わたしは自分の体力に自信をなくしていたのだが、サブバックのみで出かけた今日はサクサクと他の巡礼者を抜いていくではないか。

 

単に荷物が重いせいだったのだ。

 

長期旅行のわれわれの装備は、近場から来たカミーノのみの巡礼者のものより倍以上重い。

荷物運搬サービスを使って次の宿へとバックパックを送る人もいるし、われわれの荷物は行く先々で驚かれていた。

 

まるで羽が生えたようじゃないか。

 

最終日の余韻よりも、ハイスピードで景色が流れていく快感がまさり、残り約5km地点のモンテ・ド・ゴゾまでいっきに歩いた。

 

 

モンテ・ド・ゴゾは大規模なアルベルゲのある丘であり、ここからサンティアゴの町が見える。

 

ふと見覚えのあるデザインが見えたので足をとめると、カミーノをモデルにした済州島の道「オルレ」についての看板があった。

どうやら数百メートル先に「オルレ」のモニュメントがあるらしい。

 

昨夏済州島も歩いていたわれわれはぜひともそれを見たいと丘を余分に上り下りし、やっとのことで、イベント会場のテントの群れの中にそれを見つけた。

 

済州の石像トルハルバンや、馬をかたどったオルレのシンボル「カンセ」。

われわれの旅も済州からスペインへとつながったのだ。

 

そしてあとはサンティアゴまで、下って下って、下る。

 

午前10時頃、サンティアゴ・デ・コンポステーラのカテドラル(大聖堂)に到着。

 

8年前の巡礼時には一部工事をしていて見えなかったカテドラルが、濃いカラッとした青空のもと、きれいに全容が見えた。

 

他の巡礼者のように抱き合ったり叫んだり泣いたりすることはなかった。

2回目である今回は、歩ききったという達成感も前回よりなかった。

いつもとあまりかわらぬ気分で淡々としていた。

 

が、われわれは人生で2度も800kmを歩ききり、この場に来ることができた。

それは幸運だ、と思った。

 

カミーノは運に左右される道だ。

 

カミーノの存在を知った運。

スペインに渡航できた運。

山道で足をくじかなかった運。

雨で風邪をひかなかった運。

カミーノで出会った人と、無事に、また一緒に歩けた運。

 

「自分がやり遂げた」という感覚はあまりなかった。

どこかから偶然落っこちてきたような幸運に包まれて、わたしは歩いていたのだと思う。

 

 

(「もうこういう花も見ることないんやで」と夫がいうので撮った。

この景色が当たり前じゃなくなる寂しさが、ゴールした喜びよりも大きい)

 

(残り10km地点の夫)

 

(済州島「オルレ」のシンボル、カンセ。

懐かしさに「カンちゃん!」と小さく言いつつ駆け寄った)

 

(大聖堂、850kmの終着点)

 

 

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