春の小径は海へと続く【スペイン巡礼日記 #3】 | ハゲとめがねのランデヴー!!

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『深夜特急』にあこがれる妻(めがね)と、「肉食べたい」が口ぐせの夫(ハゲ)。
バックパックをかついで歩く、節約世界旅行の日常の記録。

 

海の見える巡礼路

 

スペイン巡礼路の《北の道》を歩く人々は、カミーノ経験者が多い。

われわれにしても8年前に《フランス人の道》を歩いたが、そのときは初めてのカミーノだという人が多かった。

 

また、《フランス人の道》では日本人、韓国人、台湾人など東アジアの人々とよく会ったが、《北の道》はスペイン、フランス、ドイツなど近場からの巡礼者が多く感じる。

 

そのようななかアルベルゲ(巡礼宿)の夕食の席でメルボルンから来たという若い女性と会った。

遠くから来たもの同士の連帯感や、かつてワーホリでの思い出のあるメルボルン出身という親近感もあって、初めての巡礼という彼女に

 

「なぜ最もポピュラーな《フランス人の道》じゃなくて《北の道》にしたの?」

 

と聞いてみたところ、

 

「海が見えると聞いたから……」

 

とのこと。

 

そう、内陸部を通る《フランス人の道》とは違い、《北の道》は海のそばを通るのである。

 

 

巡礼3日目、海に向かって続く長い坂を下りスマイアという町に着いた。

 

巡礼のスタンプをもらうため観光案内所に行きカタコトのスペイン語で話しかけると、案内所の女性は忍耐強くわたしのスペイン語を聞きとってくれた。

そしてバスク語で「ありがとう」は「エスケリカスコ」と言うのだと教えてくれ、バスク語のミニ単語集もくれたのである。

 

バスク語というのはミステリアスな言語だ。

スペイン語やフランス語と共通性はなく孤立している。

もらった単語集を見ていてもアルファベットが見慣れない配列で並んでいて楽しい。

 

イルンからスタートした巡礼路は、しばらくバスク地方を通る。

 

せっかくなのでバスク語もかじりたいところだが、歩き終えたあとは洗濯と食事もやっとのエネルギーしか残っておらず、何かに取り組む余裕などない。

のんびりしたくてやってきたはずが意外と毎日忙しいという、巡礼の大いなる矛盾である。

 

 

美しい中規模の町スマイアを抜けると、しばらく森の道が続いた。

そして巡礼6日目、マルキナ=シェメインの町から歩き始めた日は、常に小川が近くにある道だった。

 

春の小川はさらさらゆくよ、と口ずさみたくなる小径。

周りには黄色、白、ピンクの花々。

 

以前《フランス人の道》を歩いたのは秋だった。

夏の終わりを感じさせる枯れたひまわりと、黄色く色づくブドウの葉の道だった。

 

われわれはこれから1か月以上かけてサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す。

海を右手に見ながら、「春」の中を歩いてゆくのである。

 

 

(晴天の日の緑は春の色をしている)

 

(歩いていると綿毛がぷかぷか飛んでくる。

ぼーっとしていると鼻や口に入りそうになる)

 

(夫が撮った写真もけっこうまざっている。

これもそのうちの一つ)

 

(丘を越え、その日に泊まる予定の町が見え、それが美しい場所だったときの安堵と喜びといったら)

 

(スマイアの宿は町はずれの高台にあり「まだ上るのか……」とげんなりしたが、宿の裏手から海が見下ろせた)

 

(小さな教会の向こうに日が沈む。

今日も1日が終わる)

 

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