最古で世界一なアヌラーダプラ
申し遅れたがアヌラーダプラというのはスリランカ最古の都のあったところで、われわれは
キャンディ(シンハラ朝最後の首都)→ポロンナルワ→アヌラーダプラ(最初の首都)
の順に、シンハラ朝の時代をさかのぼってきたことになる。
ガイドのおじさんの話も「これは2600年前の菩提樹である」とか、「1800年前の宮殿だがタミル人が燃やしてしまって今は柱だけ残っている」だとか、歴史の振れ幅が大きくなってくる。
そのような壮大なスケールのツアーのなか世俗的な話になってしまうが、観光の途中ロウソクを備えるエリアがあり、そこでおじさんがわれわれにロウソクをよこしてきて願い事をしろと命じた。
わたしは「遺跡入場料25ドルの元がとれますように」と祈った。
で、立ち去ろうとしたらおじさんはロウソク売りにチップを渡せという。
待て。
わたしは納得していれば10万円でも惜しくはないが、納得していなければ1円たりとも出したくない。
金額の多寡ではない。
たとえば「ロウソクをそなえたいか」と聞かれるなどし、意思決定に自分が関わっていれば問題なかったのである。
今回のロウソクの一件は明らかに後出しであり納得できない典型例のようなものであった。
しぶしぶ小額紙幣を出したが非常に不愉快であり、願い事を修正し「25ドルとロウソク代の元がとれますように」と数回唱えなおした。
他の旅行者もきっとそうしているに違いない。
その後は338頭のゾウの像がめりこんだ壁にかこまれた338フィートのストゥーパ(仏塔)であったり、かつて5000人の僧がランチをした場所だったりをめぐり、なにやら象や像や僧だらけでややこしい。
また、世界一のムーンストーンや世界一のガードストーンも見に行った。
ムーンストーンはスリランカの寺院や建造物の入り口に敷かれた半円形の石で、ガードストーンは入り口の階段下の左右に置かれた像である。
いったいなにをもって世界一なのかはよくわからないものの、柄がはっきりと見え美しかった。
ポロンナルワでもアヌラーダプラでも、遺跡の階段部分にいったいなんなのか判然としないミステリアスな動物がついているので気になっていたら、ガイドのおじさんは
「これはゾウの頭、サルの目、ライオンの足、コブラの舌など7つの動物の組み合わせなんだ」
と教えてくれた。
のちにポロンナルワで購入した冊子でもこのキメラについての記述を見つけたが、動物の種類が微妙に異なっていたので諸説あるのかもしれない。
ともかく大雨のなかトゥクトゥクツアーはなんとか終わった。
アヌラーダプラの遺跡はポロンナルワほどは浮き彫りなどの緻密なカワイイ系遺物はあまり見つからず、どちらかというと仏教的権威を感じるスケールの大きい遺跡が多かったが、ここが長年都であったということや、仏教がいかに町の景観と一体であったかを感じる遺跡群であった。
また、スリランカの王たちは灌漑やため池など水利事業を行ってきており、そうしたテクノロジーが古代から発達してきたことに改めて驚かされた。
25ドルとロウソク代の元がとれたのかどうかはわからないが、文化三角地帯の世界遺産遺跡めぐりはそれぞれ持ち味の違う思い出となったのだった。
(……象牙切ってる?)
(なぜ壁にめりこませたのか、誰が建設の意思決定に関わったのか興味をそそる)
(このセンスはスリランカだなあ、とスリランカ通になってきた気分)
(水牛をめずらしがるわれわれのために、群れのいるところでトゥクトゥクとめてくれた)
(ネックレスの玉ひとつひとつがはっきりとしていて、表情は穏やか。
ハイクオリティなガードストーン)
(これがミステリアスな生き物。やはりスリランカは口から何か出してる造形が多い)
(裸足でまわりを一周)
(ストゥーパが見えるアヌラーダプラの風景)