桜庵の箏日記 ~芯のある音(箏の音)~

 

  日曜日担当、箏・三絃大好き「桜庵」です。

  今日は、「芯のある音(箏の音)」の話です。

 

  本題に入る前に、

「芯(しん)」に関する話題を

  2つ出します。

 

[その1]

  昔、ある講演会で、

  講師の方から、こんな話を聞きました。

 

「僕は、鉛筆が好きなんです。

  鉛筆って、真ん中に芯が通っていて、

  周りに木を使っています。

(気を遣っています。)」

 

  それ以来、

  私は、なぜかシャープペンシルを使わず、

  鉛筆を使うようになりました。

  もっとも、高齢になると、

  芯の細いシャーペンより、

  芯の太い鉛筆、

  しかも、2B、3B、4Bあたりの

  濃いものでないと、

  自分で書いたものでさえ、

  読めなくなりました。

 

[その2]

  ご飯は、芯がなく、

  ふっくらと炊き上がるのが理想です。

  しかし、

  パスタのゆで方のコツは、

  食べるときにアル・デンテ(イタリア語で歯応えのあるという意味)であること、

  だそうです。

  つまり、中央に少しだけ芯が残っている状態が理想です。

 

  さて、本題です。

 

  時々、

  箏の先生(師匠)や、

  箏講習会の講師の先生から、

 

「芯のある音を出してください」


  と言われます。

 

  私が、頭を傾けている(理解できず?)と、

  ある先生が、実際に弾き比べてくださいました。

 

  琴爪で、絃の上をなでるように当てて音を出し、

「これは、芯のない音」

 

  次に、

  琴爪の角を、絃に少しだけ当て、

  小さい音だけど、余韻が残るよう、

  瞬時に力を入れて音を出し、

「これが、芯のある音」

 

  明らかに、違います!

  前の音は、絃の音が聞こえただけで、

  余韻がありません。

  でも、

  後から弾いてくださった音は、

  小さい音でも、遠くまで響いています。

 

  ポイントは、

  箏全体が鳴っているかいないか、

  です。

 

 

 

  箏の構造を確認してみます。

  箏は、

  桐の木でできていて。

  中は空洞になっています。

  絃を弾くと、

  絃の振動が表板全体に伝わって振動し、

  側板や裏板にも伝わって、

  中の空洞部分の空気にも共鳴します。

  そして、

  裏側に空いている2つの音穴(いんけつ)から

  音が外に出ていきます。

 

 

  箏を弾くとき、

  絃の表面をなぞっただけでは、

  共鳴はしないのです。

  たとえ、小さな音でも、

  箏全体が鳴る音を出さないと

  箏の音

  が出ないわけです。

  どのように弾けば鳴るかは、

  いろいろと工夫するしかありません。

 

  パスタの

  芯のある理想的なゆで方

  と同様、

  箏も、

  芯のある理想的な箏の音

  を出したいものです。

 

  さらに、

  人として、

  芯が通って、

  さらに周りに気を遣うことができたら、

  とても理想的です。

 

  んん、、、。

  しかし、

  理想と現実は、なかなか一致しません。


  トホホ。

 

 

 

追 伸

  今日は、着物の話です。

  5月の演奏会で着物を着た時、

「おはしょり」が余り出ていなくて、

  着た後も、一生懸命引っ張りましたが、

  不自然なまま、演奏会に出掛けました。

 

  正直言って、演奏している時は、

  細かい着付けの部分は、

  客席からは見えないので、

  影響はありませんでした。

 

  しかし、楽屋では、

  仲間に指摘されてしまいました。

 

「ん、、、。この着物、

  少し丈が短い着物だったかな。」

  と、言い訳をすると、

 

  間を入れず、

  二人の方が、ほぼ同時に

「あら、それって、最初の腰ひもの位置を

  下げればいいのよ。」

  と、声を出されました。

 

  えっ?

 

  そういえば、

  確かに、今日は、

  1本目の紐を

  いつもより

  少し
  高い位置でくくった気がする。

 

  納得!

 

  これって、常識だったのでしょうか。

  また一つ、賢くなりました。

 

  ということは、

  この1本の腰紐の位置調整で、

  少々なら、

  身丈の長短調整は出来る訳だ。

 

  やっぱり、

  着付け教室に行かない自己流着付けには、

  知らない常識がありました。

 

 

また来週! 桜庵でした。