ご機嫌いかがですか

水曜日は清水比庵の歌をご一緒に

桃の花咲きたる窓をあけておく起てば見ゆれど坐れば見えず                

これぞまさしく、そのまんま。ただごと歌だ。桃の花をみようとして、窓を開けた。窓が高いのだろう。起きたら(立ったら)見えるけれど、座ったら見えないというのだ。ずっと見ていたいけれど、体が、そうはさせてくれない。だから座ると見えない。悔しい気持ちが溢れている。それにしても、じっと桃の花を見ていたいと思うあたりが、風流人比庵だろう。花を見ていて、退屈しないのだ。

有名どころから「桃の花」

 

鶏ねむる村の東西南北にぼあんぼあんと桃の花見ゆ

小中英之

「ぼあんぼあん」がとっても印象的な歌。

四方八方と言わず、東西南北と言ったのも面白いかな。

小中は病弱だったという。仕事にも付けなかったほどだ。

だから、

氷片にふるるがごとくめざめたり患むこと神にえらばれたるや

と詠んだ。

 

※はるさんの短歌メモリー

彼もまた戦争の禍を受け止めた岸上大作不器用すぎる

 岸上大作を決して非難しているのではない。多分、彼に関する文を読み、いろいろ思ったのだろう。

戦争で父を亡くし、女手一つで働く母の労苦を間近に見ながら育ち、新しい社会を夢見て東京の大学に進学し、恋と革命に生きた歌人。日本が安保闘争に揺れた政治の季節に、失恋の痛手と安保闘争の挫折を味わい、21歳の若さで自ら命を絶った。もし、戦争が無かったら、もし父が戦死しなければと、夭逝したことを残念に思っている。純真すぎたのかもしれないな。彼の写真の眼鏡はひびが入っている。デモで壊したか。

※岸上大作をよく知っていたわけではなく詠んだ、後悔の一首。