桜庵の箏日記 ~箏は、弾けば弾くほど良く鳴るか?~

 

  日曜日担当、箏・三絃大好き「桜庵」です。

  今日は、「箏は、弾けば弾くほど良く鳴るか?」

  についてです。

 

  琴屋さんで、

  新しく箏を作っていただくと、

「しっかり弾いてくださいね。すぐには、音が出ませんから」

  と言われることがあります。

 

  箏は、弾けば弾くほど良く鳴るようになるのでしょうか?

 

  同じ疑問を、

  多くのアコースティックギターの愛好家の皆さんも

  抱いていらっしゃるようです。

 

  インターネットなどで調べてみると、

「木で作った楽器には、中に含まれる水分が、、、、、、」

  と、理解しにくい内容でしたが、

  とにかく、弾くことで、

  木が楽器として良好な状態になることを

  指摘されているものがありました。

  また、

「木の部分と、部品の金具などが、弾くことで、なじんでいく。」

  という指摘もありました。なるほど。

 

  しかし、

  私が一番、納得できたのは、

「弾けば弾くほど、

  弾く人が、その楽器の個性が分かってきて、

  その楽器が鳴る弾き方ができるようになる。」

  という指摘です。

 

  実際、数十年前に購入した、

  固くて重たい比較的高額の箏について

  お話します。

 

  購入当時の先生(師匠)にも、琴屋さんにも、

「弾いているうちに、音が出るようになりますよ。」

  と言われたものの、

  傷を付けたくなくて、

  演奏会前だけ、取り出して練習しました。

  日頃は、練習用の低額の箏を弾いていました。

  すると、

  演奏会では、

  いくら力を入れても、琴爪が跳ね返されて、

  音が全く出ないのです。

  音が出なくて、重たくて、高額で、、、。

  申し訳ないけど、苦手な楽器になりました。

  私が愛着を持っていないのだから、

  楽器の方だって、応えてくれませんよね。

  なかなか、頑固な箏です。

 

  数十年たって、とうとう、

「すぐに、音の出る箏を作ってください。」

  と、新しい箏を購入しました。

  以前の箏より軽くて、

  確かによく音が出る素直な箏です。

  

  演奏会前の購入だったので、

  嬉しくなって、しっかり練習し、

  自信をもって演奏することができました。

 

  でも、

  演奏会が終わると、

  やっぱり日頃使うのはもったいなくて、

  あまり弾かないようになりました。

 

  反対に、

  堅くて重たくて、音が出せなかった箏を

  毎日の練習に使うようになりました。

  すると、

  なんとなく、

  鳴らすこつ、爪の当て方、体重のかけ方などが

  わかってきて、

  おもしろくなってきたのです。

  簡単に音が出る箏より、

  鳴らす工夫が加わり、

  楽しくなってきたのです。

  愛着もわいてきました。

  そうすると、

  楽器(箏)の方も応えてくれるようで、

  長年の疎遠を取り戻すように、

  いっしょに、いろいろな音色を発してくれるようになりました。

 

「ごめんなさい。長い間、あなたの良さを引き出せなくて、、、。」

 

  そういえば、

  偶然、TVで、

  木で、盆や皿・ボールを作る職人さんの映像を見たとき、

「作品をつくる過程で、木がここを削ってくれ、ここは削らないでくれ、と教えてくれます。」

「私たちは、素材に敬意を表します」

  という、言葉を耳にしました。

 

  箏の演奏も、

「箏(楽器)が教えてくれる」

「箏(楽器)に敬意を表すると、応えてくれる」

  ということがあるかもしれない、

  と思いました。

 

  昔?の方の中には、

  自分の箏に名前を付けていらっしゃったようです。

  私も、そうしてみようかしら?

  んん、、、、。

  良い名前が思いつかない、、、。

 

  余談ですが、

  いや、一番大切なことかもしれませんが、、、。

「よく鳴る」

  という表現には、気を付けなければいけません。

  実は、古くなった乾いた箏は、

「よく鳴ります」。

  でも、「カンカン」に近い高い音です。

  私が言いたいことは、

「よく鳴る」ではなく、

「よく響く」と表現した方が正しいと思います。

  弾いた後の余韻が、

「ビイィ~~~ン」と、

  大きく、長く、遠くまで届く楽器

  そして、それができる弾き方

  多くの方が、追い求めているのだと思います。

 

 

追 伸

  今日は、

「ふと、思い出したことです」

 

  先日、ラジオ番組で、

  昔の思い出に残る曲として、

「G線上のアリア」

  をリクエストしていた人がいました。

 

  そういえば、

「この曲、私にも、思い出があるような、、、」

 

  聞きながら、

  遠い昔の、

  幼稚園の記憶がよみがえってきました。

  この曲が流れてくると、

  いつもは走り回って、

  先生を困らせていた男の子も

  なぜか、おとなしく自分の椅子にすわって、

  順番がくるのを待っていたのです。

  ピンク色をした、ちいさな甘い「肝油」の粒を待つのです。

 

  私も、先生から順番に口に入れてもらうのが

  楽しみでした。

 

  すっかり忘れていた記憶なのに、

「G線上のアリア」を聞いて思い出すとは、、、。

  音楽の力ってすごい!

  甘酸っぱい思い出です。

 

 

  では、また来週! 桜庵でした。