ごきげんいかがですか?
38年 |
ペットたち |
俳句数はわずか7句であります。漱石の心は,小説に傾いてしまっています。その年の小説は,「倫敦塔」「幼影の盾」 「琴のうら音」「一夜」「薤露行」などであります。これだけの小説を書いているときに,俳句への気持ちの余裕は無かろうと思われます。
あえて
朝顔の葉陰に猫の目玉かな |
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死んでしまった猫が,まだいるように思えた幻影のように私には思えます。それほどかわいがっていたかどうかは分かりません。
白菊の一本折れて 庵(あん)淋(さび)し |
この白菊は単に,写生とは思えません。何か,淋しくなった家のことを感じているように思えました。そんな時,今度は犬を飼い始めます。
今度はちゃんと名前があります。その名前は,「ヘクトー」です。謡いの師匠から貰った小犬でありましたが,漱石はトロイ戦争の勇者の名前を付けてかわいがります。
このヘクトーは大正3年に池にはまって死んでしまいます。
秋風の聞こえぬ土に埋めてやりぬ |
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文鳥も飼うことになります。これは,三重吉の指導で飼い始めます。ところが,餌をやり忘れて死んでしまいます。漱石は涙を流して悔やんだそうです。
後に明治43年,三重吉の文鳥が死ん時に贈った俳句は
青梅や空しきかごに雨の糸 |
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ですが,自分の文鳥にも同様な心境であったことでしょう。
この年,手紙をたくさん書いています。ほぼ毎日のように書いているのです。来た手紙には,返事を出すものと決めていたようです。長い手紙を貰うと,私の為に,こんなにも長い時間を費やしてくれたと,喜んでいたといいます。
眼目
冬日載せ
波郷忌や村の墓にも冬日載せ 矢島渚男(なぎさお)
さっそく作った
それぞれに 冬日載せたる 蜜柑かな 鶯庵
うん、なかなかの句になった。
では御機嫌ようさようなら
今どきの季語例
冬めく 口に袖あてて行く人冬めける 高浜虚子
風呂吹き大根 風呂吹きのとろりと味噌の流れけり 松瀬青々
11月 あたたかき十一月もすみにけり 中村草田男
炬燵 ほこほこと朝日さしこむ火燵かな 丈 草
木の実 よろこべばしきりに落つる木の実かな 富安風生
蜜柑 蜜柑摘む向ひの島の日を浴びて 鶯庵
枇杷の花 辛酸を語らぬ遺影枇杷の花 吉岡桂六