桜庵の箏日記 ~箏のランク(グレード)~

   日曜日担当、箏・三絃大好き「桜庵」です。
   今日は 「箏のランク」 の話です。
 

  「箏体験出前教室」 などに、たくさんの箏を持って行くと、
    まず、
  「この 『こと』 って、すごい値段なのでしょうね。」
    と、金銭に換算して、

 感心やら心配をしてくださる方が、いらっしゃいます。
 箏の音色、箏曲の美しさより、

  もっと気がかりな事項なのでしょう。

  確かに、箏は、1~2万ではなかなか手に入りませんが、
  箏にも いろいろなランクがあります。
  低額のもの (5万円くらい~) もあれば、
  高額のもの (200万円~600万円) もあります。
  

  何が違うのか。

  骨董のお茶碗  (私には、高価な「備前焼き」の器も、

  百均の器も同じように見えてしまうのです。すみません。)

  などとは違って、
  箏のランクの違いは、
  見ただけでも、比較的わかりやすいのです。

  箏(琴)製造・箏(琴)販売の専門店のサイトを開けば、
  分かりやすく説明してあります。
  そちらをご覧いただいた方が、近道ですが、
  私なりに、まとめてみたいと思います。

  ただし、ご注意!
 

  ランクの高い箏ほど、
  いい音が出る、いい演奏ができる、
  と考えたら甘い!!
  最上級ランクの箏でも、
  演奏者の腕が良くなければ、
  いい音色は出せないと思います。
  また、
  練習用の低いランクの箏でも、
  演奏者によっては、
  素敵な音色を出してくださいます。
  そして、
  聞き手に、音の違いが分かるかどうかも疑問です。

  そういえば、
  今年のTV番組 「格付けチェック」 には、
  ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロの六重奏、
  総額65億円と総額500万円の聞き比べが登場しました。
  皆さん、正解が分かりましたか?
  箏も、同じかもしれません。


  とりあえず、

  今回は、箏の造りのランクの話です。

1 「板目(いため)」 と 「柾目(まさめ)」 の違い
  箏本体の材料は、桐(きり)の木です。
 「桐のタンス」 と言えば、

  白くて軽いイメージですが、
  箏の桐は、

  寒い地方で育った固くて重い桐の木です。
  
  一般に、山のような板模様が見られるのが 
 「板目」です。
  材木を平行に切っていくので、

  あまり太い木でなくても取れます。
  
  木目がまっすぐ線が並ぶように走っていたら、
 「柾目」です。
  材木の半分から取るため、

  太い木からでなくては、取れません。
  
  一般に
  木目は多い方(密集している)が良品と言われます。
   



  「板目」の中には、
 「玉目(たまめ)」という、
  複数の玉のような模様が見られるものがあり、
  その模様の出方によっては、

  大変高価なものもあります。
 

 「柾目」 の箏は、高価で、
  音質にも特徴 (素直な音、ストレートな音、と言われます) があります。
  一般的には、

「板目」 の箏を使用する人の方が多いようです。


2 「並甲(なみこう)」 と  「刳甲(くりこう)」 の違い
  この違いは、箏を横から見たら分かります。
  上側(甲)の板と、裏側の板の
  
  つなぎ目が見えたら
 「並甲」です。
 
  
  つなぎ目が見えなかったら(板の模様がつながっている)
 「刳甲」です。
 

  この違いは、
  2枚の板を合わせる時の、

  合わせ方の違いで生じます。
 

 「刳甲」の方が、手間がかかりますから、
 「並甲」より、高額になります。


3 内側の掘り方の、「簾目(すだれめ)彫り」 と 「綾杉(あやすぎ)彫り」 の違い 
  箏の内側は、
  裏板の2つの音穴(いんけつ)から

  見ることができます。
  中を覗くと
  板の裏側に、

  音を反響させるための彫り込み

  があることが確認できます。

  線状に彫ってあったら、
 「簾目彫り」 です。
  昔は、職人さんがノミで掘っていたのでしょうが、
  今は、たいていの場合機械で掘るのだと思います。
 

  斜めに葉脈を繰り返したような彫り方がしてあったら、
 「綾杉彫り」です。
  これは、職人さんが、ノミで一本一本彫っていくのだから、大変です。
  箏の音色を少しでもよくするための手間ひまです。
 「刳甲」ランクの箏に、見られます。 
 

  他にも、
 「六宝彫り」

 

「子持ち綾杉彫り」 「麻型彫り」など、
  手の込んだ掘り方があります。

4 装飾の材料、「花梨(かりん)」 と 「紫檀(したん)」 と 「紅木(こうき・こうぎ)」の違い 
  最初にお話しした、「甲の部分の材木の善し悪し」 が、
  箏の価値を決める基本です。
  なぜなら、

  その違いが、音色の違いになるからです。
   そして、
   善い材料で作った箏には、

   それに見合う装飾が施されます。
  
  ここでは、

  龍角(弾く側の高い部分)・雲角(絃を丸めてある側の高い部分)と、
  その左右にある板 「四分六(しぶろく)板」 の材料

  に着目してみます。
  
  練習用の箏には、
  多くの場合、 「花梨」の木が使われています。
 

  演奏会用の刳甲の箏になると、
 「紫檀」「紅木」が使われます。 

 
  さらに、高額な箏には、
  象牙が使われます。

  その他の装飾部分、

  足の部分や付属の猫足の材料も、
  同じような材料の使い方がされます。


5 龍角・雲角、四分六板、柏葉(かしわば)の部分、の造作の違い
  箏のランクは、
  龍角・雲角部分、四分六板部分の造りと、
  柏葉(絃を束ねてある部分の葉っぱのような形をした板)の造りで
  見分けがつきます。

①   ベタ
   一番シンプルな造作です。
   練習用の箏に多い作りです。
   材料は 「花梨」 のことが多いようです。

 
②   口角巻(くちづのまき)・角巻(かくまき)
   龍角・雲角に、
 セルロイドなどで、白く縁取りがされています。
 

③   半上角(はんうわづの)
   龍角・雲角に、
 セルロイドなどで、白く縁取りがされ、
 さらに
 四分六板にも、同じように白い縁取りがされています。

 

④   上角(うわづの)
  龍角・雲角に、
 セルロイドなどで、白く縁取りがされ、
  四分六板にも、
  同じように白い縁取りがされています。
  さらに、
  柏葉の部分にも、白い縁取りがされています。
 


⑤  玉縁(たまぶち)
  龍角・雲角の縁取り、四分六の縁取りは、
  浮彫になっています。
  材料は、紅木です。
  さらに、
  柏葉が、透かし彫りになっています。
  「刳甲」の箏に、見られます。

   
⑥  象牙の一本彫り
  高価な箏には、
  龍角・雲角の縁取り、四分六の縁取り、柏葉の透かし彫り、口前の装飾、猫足の装飾、
  すべてに象牙が使用されているものもあり、
  500万、600万の高級品になるようです。

6 口前部分の 金口(きんくち)や 蒔絵(まきえ)
  通常は、カバーをしている口前の部分、
  箏によって、シンプルなものと、
  蒔絵が施してあるものがあります。
 

 

  立派な蒔絵があるからランクが上、
  とは限りません。
 

  山田流の箏には、
  蒔絵を施していない高級な箏もあります。
   
 「金口」といって、
  口前の周りに、金の枠があれば、
  少し上級の仕様です。
    

  さらに、
  この部分が、すべて象牙であったりすれば、

  大変高額な箏です。
  
7 裏板 

  裏板にも注目してみてください。

 上級な箏になるほど、板の目が詰まっています。

 ここは、もしかしたら重要な部分かもしれません。

 様々な装飾部分よりも、

 音が響くのに、影響するでしょうから。

 

 

 何かの参考になりましたか?

  

  では、また来週! 桜庵でした。