たしかに、この題名では、なにか暴露本的なものを期待してしまうが、実は真面目に国立の千葉大学を卒業、研修医を経て個人医院を開業するまでのお話で、他の医者の金もうけの批判とか攻撃などの暴露本的要素は一切ない。
参考になるのは、大学病院の研修医、研究員などで経験を重ねたあとで、開業しようとする場合、本書の通りだとすると驚くほど容易に開業資金を貸してくれるところがあるらしい。やはり「医者にお金を貸す」ということは、それほどリスクのない融資なのだろう。
それと、大学の医学部を卒業するのにかかるお金。大体私立大学の医学部で6年間学ぶと、2200~2300万円くらいの学費がかかるという。普通のサラリーマンではとても出せる金ではない。やはり先代の先生、若先生、というように親代々医者というのも分かるような気がする。
これに対して、国立大学の医学部を卒業するには360万円で済むという。これならサラリーマンでも出せない金ではない。
ただし、医者というのは一人前になるには時間と金がかかる。大学6年間の勉強の後、初期臨床研修医2年、後期研修医(専門医)2年、さらに医員を何年か経験して大学に残るか、開業するかの道を選ぶ。
この著者は患者との対話を大事にする。まず、問診、これが一番大事。よく患者をろくに見もしないで頭から病名を決めて薬を出す。これが一番ダメな医者で、我々がよく遭遇するところである。問診、触診、聴診、などを経て必要なら検査から診断。自分の手に負えないと思ったら躊躇なく大学病院その他専門病院に患者を回す。
これを実行している著者は本当に良いお医者さんだと思う。
初耳で興味のある話、単調で面白くない話、いろいろあるが、この著者の真面目な開業医ぶりが心に残る。