本書の題名に「満州国 見聞記」とあるほか、副題に「リットン調査団同行記」とある通りあまり政治的発言ではなく、リットン調査団同行の新聞記者として、単純に「知らなかった国の旅行記」の側面があって、今から90年以上も前の日本や中国の風俗習慣、さらにシベリヤの印象など、著者の好奇心に満ちた観察眼で的確に表現している。

日本は領土的野心から満州事変を引き起こし、国際連盟に提訴されたたもので、国際連盟から調査のために満州に派遣されたのがリットン調査団である。
我々が歴史上の人物としてしかしらないような犬養毅首相、荒木貞夫大将、中国では蒋介石、張学良、汪精衛などに直接会って取材した印象、顔や声の特徴など手に取るように描写していて面白い。
この調子で、日本の宴会における芸者接待の様子など生き生きと描写。
日本、満州、関東州、朝鮮、シベリヤなどの旅行記の面白さは読みだしたらやめられない。
政治的なことは、最終章の第七章において、日本が万里の長城を越えて中国に攻め込むような愚を犯さないように希望しているが、歴史はご存じの通り、満州事変、上海事変、日中戦争から太平洋戦争へと拡大し、著者の希望を裏切ったことになる。
90年前にタイムスリップしたような記録として面白い読み物である。

 

 

以下、参考写真です

 

犬養毅首相

 

 

蒋介石

 

 

 

汪精衛

(中国における日本の傀儡政権首脳)

 

 

 

東条英機

第二次大戦の口火を切る英米に対する宣戦布告時の総理大臣

 

 

 

昭和天皇と満州国皇帝溥儀(満州国は日本の傀儡国家)