書名が「東方見聞録 マルコ・ポーロ」
訳・解説が長澤和俊となっているので、マルコポーロの「東方見聞録」を長澤氏がそのまま訳した本かと思ったがそうではない。
原文で8000ページに亘るという「東方見聞録」を、シルクロード史の専門家の長澤氏が、自分で咀嚼して読者に提供してくれる、いわば長澤版の東方見聞録である。
書物の形式としては、まず長澤氏が東方見聞録の中身紹介を懇切丁寧にし、そのなかで。長澤氏が原文をそのまま読者に提供した方が良いと思う部分を、抜粋して訳文を掲げている。その意味で、ほかのレビューアーの方も指摘しているが、内容が二重・三重に書かれており、かなりくどい部分もある。
しかし、西暦1270年ベニスからシルクロードを通て、当時の元(ゲン)まで艱難辛苦の旅をかさね、元の首長フビライ・ハンの信頼を得て、地方長官としても数年元のために働いたマルコ・ポーロとはよほど頭の良い男だったのだろう。
1493年のコロンブスのアメリカ発見に先立つこと220年も前の世界旅行記は、このほかにあるのだろうか。
マルコが父親のニコロ・ポール、ニコロの弟のマッテオ・ポーロと3人で旅立ったのは若干17歳の時であった。フビライの気に入られたマルコは数か国語をものにして、フビライの命を受け、広く世界を旅して見聞したところをフビライに報告したので格別に可愛がられた。
マルコの見聞録には、自分が旅で見聞きした事以外に、伝聞をも詳しく報告してある。その伝聞の中に出てくるのが黄金の国ジパングである。ジパングではどこの家も全部黄金でできており、その黄金を輸出する訳でもないので著しく富裕の国である報告されている。
マルコ一行は長年フビライのために尽くしたが望郷の念禁じがたく、暇を申し出でたところ、元の国の二人のプリンセスを中東まで送り届ける命令を受けた。任務を果たした後は帰国しても良いことになっていた。
この途中の旅行記が、まるで西遊記のように面白く、各国の風俗習慣を詳しく報告している。
話半分として今から700年以上前の西域の様子が分かって面白い。この頃には、まだアメリカも発見されておらず、3人が旅した地域が当時の世界の果てであったろう思われる。

マルコが故郷のベニスに帰ったのが25年後。すでに42歳になっていた。

故郷の人々もマルコのことは忘れていたが、そのみやげ話やみやげの品を見せられて、ようやくマルコが本物と信じて貰えたようだ。西洋版浦島太郎だ。
本書は歴史・地理書としても面白いし、純粋に旅行記として読んでも面白い。

 

 

マルコ・ポーロの肖像画