タイトルが長いんじゃ!
副題と逆にした方がいいと思う。
 
以下はネタバレありの感想です。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ふとん1ふとん2ふとん3
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
G2さんやキャストの方々も言っておられますが、この作品はサクセスストーリーではなく「落ちていく物語」というのがとても魅力的ですよね。
 
女性、移民として当時のアメリカ社会を生きていく上での苦悩や犠牲にせざるを得なかったものはサクセスストーリーでも描くことはできると思います。
でも、ある程度歳を重ねた人間なら一度は抱くであろう過ぎ行く時への想いや2人の辿る道も描くことで、これはコスメブランドのトップによる仁義なき戦いだけではなく、人間の物語なのだと実感できました。「闘い」でもあったし。
まさに"WAR PAINT"、どう考えても原題のままにしておくべきだった。
 
そんな中で最後まで誇り高いエリザベスとヘレナの姿には涙が出るし、自然と背筋も伸びました。
毎日新聞だったかな?明日海さんのインタビューで「あなたも覚悟を持ちなさいと言われているような気がする」とエリザベスについて語っていましたが、観劇後の心持ちはマジでこれです。
 
 
音楽はちょっと口ずさむには難易度が高い曲ばかりでしたが笑
その分聴きごたえがあってバラエティ豊かでした。
 
このメロディー↓と
(My American Moment)
「女達の顔に力と輝きを
自信を溢れさせ平等を勝ち取る」
(フィナーレ)
「女を自由にした?それとも奴隷に?」
「きっとわかってくれる、二人が与えたもの」
 
一幕終わりの『二人きりで』の
「もしも互いの知識を活かし合うことできたら」
「橋を渡り歩もう お互いを認め合って」
のメロディーは度々登場するので自然と覚えちゃいますね。
まぁBW音源を聴き込んだので私は元々全部覚えているんですけどね…。
 
『二人きりで』は、その前のザ・ブロードウェイな雰囲気の『笑える!』からの流れがとても好きです。
『二人きりで』はエリザベスとヘレナの「もしかしたら唯一の理解者はあなたかもしれない。一度会って話してみたい。」という心情を綴るナンバーですが、相手を貶めようとする『笑える!』から裁判官の「あなたがたは相手ではなく自分の妨害に成功しました」という言葉が挟まれることで心境の変化(変化でもないですが)の流れがわかりやすかったです。
ガベルの音でライトが落ちるのも、現実から彼女たちの心の中に変わったことをうまく演出していておしゃれ。
 
そして、音楽面でも「落ちていく物語」を感じる箇所がたくさんありました。
 
『二人きりで』の曲中、
「共に輝く場所から
落ちていく」
というまるで今後の2人を予見するような歌詞。
この「落ちていく」の部分は戸田さんも明日海さんもかなりドスの効いた低音で歌っています。
落ちるという歌詞なのにとても力強く、エリザベスとヘレナの誇り高さをこの部分でも浴びて鳥肌が立ちました。
『二人きりで』はエリザベスとヘレナの強さとねじれたシスターフッド、二幕への不安が1曲にまとまっていて、さすが作品の代名詞的楽曲なだけあると感じるナンバーです。
 
また主演2人の大ナンバーが最盛期ではなく、衰退し第一線から退かされるシーンで歌われるという点もこの作品ならでは。
 
『ピンク』は歌前の弁護士とのやりとりからもう切なくて…。
女性だからこその苦悩を一番味わったはずなのに彼女自身もその価値観に飲み込まれていること、もう敵はヘレナだけではないこと等を弁護士から諭されるエリザベスの姿を見ると、取締役会が彼女に突きつけた要求も当然のことだと頭では理解できます。
でも、エリザベスがどれほどの苦労と犠牲を払って会社を立ち上げ大きくしたのか、そしてコスメを通じて世の女性たちに美と力を与えたいと向かい風に抗い努力してきたのか。(その向かい風に立ち向かえたのはもちろん負けられない相手がいたからですね)
そのことを考えるとあまりにも冷酷な要求です。しかも後世に残るのは「社名」と「トレードマークカラー」だけだと弁護士に告げられる。
エリザベスが「…は?」となるのもわかります。
 
「私の値打ちはこれっぽっち?たった一つの色だけ?」
という台詞から始まる『ピンク』。
ピンクは彼女にとって栄光であり、その栄光のために彼女の手から零れ落ちていったものでもあり、栄光の最後を飾るものでもあった。
書類にサインをしたあと、今までの彼女の全てに蓋をするようにホルダーを閉じるエリザベスの表情が忘れられません。

何かを失っても、最後まで信念を貫き通した人間の誇り高さと美しさ。

『ピンク』は曲としても大変素敵なのですが、あのシーンまるごとあまりにも美しすぎました。
そして役者・明日海りおの表現力に改めて惚れた一曲でした。 (想いが溢れすぎて日本語がガタガタ)
 
これが1番予想外だったのですが、お芝居をめちゃくちゃ堪能できる作品だったこと!
舞台美術も華やかだし音楽も難しそうだしでまあ芝居部分はね…と思っていたら台詞の言い回しも間の取り方も所作も唸るシーンばかりで!メイン4人はもちろん、アンサンブルの方々も芝居で魅せるシーンが多かったです。
「見られ方」を熟知しているであろう明日海さんの所作や動きも全編素晴らしかった!特に印象的だったのはメイフェアクラブへの入会を断られたシーン。絶妙な俯き加減と帽子の影と横顔の美しさが相まって切なさを倍増させます…。
でも最後にクッと顔を上げ前を向いて歩き出すエリザベスを見て、今までもきっとこういう理不尽に直面しながらも最後には前を向いて、少し強くなって、この社会で生きてきたんだろうなと想像が膨らむお芝居でした。
 
女性がフォーカスされがちですがトミーとハリーの素晴らしい仕事っぷりと男性社会故のねじれた苦悩、なんと言っても二幕の悲哀が最高でした。
エリザベスとヘレナが似た者同士であるように、トミーとハリーもタイプは違えど似た者同士。トミーがハリーに向かって「僕の分身くん」と呼んでいることからもわかります。
『二人は恐竜』は歌も当たり前に上手いのですが、身に覚えがあるサラリーマンの悩みと(元)上司への愚痴をこぼす姿に不覚にもこの作品で1番共感してしまいましたwwww
上原さんも吉野さんもサラリーマン経験あるのかな?と思ったほど。
トミーとハリー、2人楽しく老後を過ごしていて欲しいな。
 
吉野さんは出演作を幾つか観ていましたが何気に初・上原さん。
レミゼやサイゴンのイメージだったので登場時の「ベス?」という台詞と姿にびっくり!
吉野さんはもちろん、上原さんもこういう抑えたジェントルマン的な役が似合うとは!
キャスト発表時は「明日海さんでは上原さんを尻に敷けないのでは?」と思いましたが、素晴らしい敷かれっぷりでしたね…。
『はめを外そう』最後のロングトーンはさすが。
男性2人のキャスティングも天才的でした。
 
1番の見所はもちろんラストシーン。
それまで歌いまくりですがこのシーンは『世界がまだ美しかった頃』まで一切音楽なし。
エリザベスとヘレナのマウンティング合戦から2人の間の壁が崩れるまでほぼ全て2人芝居で進行します。たまにチューリップちゃんチューリップ
顔を合わせても宿命のライバル、相変わらずマウンティング大会を開催する2人。サンドウィッチとブドウを積み上げるやらお互いの元パートナーについて言い合いするわで最後まで観客を笑かしにかかってきます。
初めて顔を見合わせた後や「てめぇ…」な感じで食器を勢いよく置いて立ち上がる部分の静寂、言い合いの時の台詞の被せ具合や言い回しが絶妙。
この作品は全編通して戸田さんのコメディエンヌっぷりを楽しめますが、ここが本領発揮という場面かもしれません。
 
その後エリザベスがヘレナのゴーギャンピンクを使っていたことをきっかけに2人の間の壁は一気に崩れていきます。

(ゴーギャンピンクって本当にあったのかなと思ったら、あった↓)

 

ここも!戸田さんのお芝居が素晴らしいのです!

 

このドレスのせいよ!むかつきとぷんすこするエリザベスに対し、少し笑いながら「あなたらしいわね。」

『世界がまだ美しかった頃』導入の「誰も覚えていないんでしょうね。」

エリザベスにリップを塗り直した後の「惜しかったわね。」

 

それまでヘレナは厳しくピシャリとした物言いが多いのですが、ここではヘレナがエリザベスにかける一言一言の温かさに毎回泣かされていました。

単に小さい頃から聞き馴染みのある声を聞いて安心しているということもありそうですが笑

ラストシーンのエリザベスを包み込むようなヘレナは、役者の年代が異なる日本版ならではかもしれません。

 

 
いやーそれにしても明日海さんは本当にお人形さんみたいでした!
メイクもハイライトの入れ方とか本当に天才的!どこの商品を使えばあの上品なツヤ感が出るのかな〜。
お人形といえばガイズアンドドールズですが、ガイズとエリヘレは舞台となっている年代が近いようです。
男性社会でもがくエリザベスとヘレナに対し「結婚!結婚!」と息巻くサラとアデレイド、なかなか味わい深い。
 
やはり明日海さんは役者としては象徴のような女性ではなく、現代的な価値観のもと描かれた、自立した女性が似合うなと実感しました。比較対象がガイズのサラだけなので断言はできないけど…。
(ちなみに私はガイズのサラも大好きです!清楚で信じた道にまっすぐ、でもスカイと出会って新しい世界に出会い戸惑う明日海サラが本人とリンクして愛おしかった。エリザベスがあまりにもハマリ役なだけなんです。
 
とは言ったものの、退団後に演じたモーツァルトやサラがエリザベスに活きているとも観る度に感じます。
エリザベスの抱える孤独はモーツァルトが抱えていた孤独に通ずるものがあると思いますし、チャーミングさと芯の強さはサラを想起させます。音域が広がった地声も伸びやかになった高音域もサラの経験が活きているはず。
 
改めてこのタイミング、このキャストと制作陣のなかで"WAR PAINT"のエリザベス・アーデンという役に明日海さんが出会ったこと、そしてそれを観ることができて本当に良かったと思える舞台でした。