第96回選抜高等学校野球大会の出場32校が決定したが、ある地区で逆転現象が起きた。それが東海地区だ。

この発表前の予想としては1枠目が豊川(愛知)、2枠目が愛工大名電(愛知)。そして3枠目に東海大会ベスト4の宇治山田商(三重)、藤枝明誠(静岡)が争うと見られた。

結果としては1枠目が豊川、2枠目が宇治山田商、3枠目が愛工大名電となった。

この選考理由についても説明があった。宇治山田商、愛工大名電はどちらも東海大会で豊川と対戦しており、宇治山田商は準決勝で5対6、愛工大名電は決勝戦で7対8とどちらも1点差で敗れているが、内容面に差があった。

宇治山田商は9回表を終わって、5対3と2点リードしており、終始互角の戦いだった。愛工大名電は4回終わって8対0とリードを許す展開。最終的に1点差まで追い詰めたが、投手は5四球、守備は2失策と内容は良くなかった。宇治山田商の試合内容を評価し、2校目となった。


予想外の選考である。

「聖隷クリストファーの再来だ!」とする声が多く見られるが、聖クリは同一カード2連敗なのに対し、名電は1勝1敗とイーブン。
戦力面でも名電は大泉、伊東、古谷と怪物級が揃い踏みと、どちらかと言えば逆転「する」側のチームである。

それでは何故このような自体が起こったのか、解説していく。



俺はよくこの手の選考が起きる度に「過去選考の傾向を掴め」と説いている。

高野連の思想は確かに世間一般からは乖離しており到底理解し難いが、実は価値基準には一貫性があり決してブレブレという訳ではない。

ネット上で囁かれている言説
・聖クリ落選を正当化させたい説
・2枠時代なら豊川と名電だった説

この2つについてだが、俺は否定的。

1つ目の「聖クリ落選を正当化させたい説」だが、そもそも聖クリ落選の一般的な言説としては

・東海三県の中京枠が欲しかったから
・聖クリの走塁妨害が悪印象だったから
・阪口監督に対する忖度
・日大に対する忖度

というものであり、愛工大名電や宇治山田商には無縁のもの。

また俺の言説である

・同一カード2連敗が響いたから
・「好投手」の吉田を攻略したから(公言)
・「優勝候補」の享栄を撃破したから(公言)

これも名電は1勝1敗だし、「好投手」「優勝候補」という要素も日大三島や中京には見られず言及もされていない。

根本的に理屈が異なる話であり、火消しをしたかったとする言説には無理矢理感が否めない。

2つ目の「2枠時代なら豊川と名電だった説」だが、図太い精神力持つ高野連の事だ。2枠時代なら豊川と宇治山田商というオチだったと思う。



では何故逆転選考は起きたのか。結論から言おう。

深く考えるまでもない。記事にある通り

宇治山田商は9回表を終わって、5対3と2点リードしており、終始互角の戦いだった。愛工大名電は4回終わって8対0とリードを許す展開。最終的に1点差まで追い詰めたが、投手は5四球、守備は2失策と内容は良くなかった。宇治山田商の試合内容を評価し、2校目となった。

これが理由だろう。重要なのは赤字の部分。

豊川との試合内容で名電と山商を比較した時に、名電は序盤コールドスコアだったのに対し、山商は終盤リードと差があった。だから宇治山田商が上と判断されたという事。

「県大会はどうなんだ!」という意見もあるが、県順位は甲乙つけ難い場合にのみ引き合いに出される要素。

これ毎年勘違いしている人が多いのだが、公式見解なので最低限把握はしておこう。


また察しの良い人はこう考える。「なら19春選抜はどうなんだ!その理屈なら学院中京選出だろう!」と。

19春選抜では決勝戦大敗の津田学園と、準決勝で終始リードも大逆転負けを喫した学院中京が比較され、結果津田学園が選出された。
試合内容論ならば学院中京が選出されていそうだが、思い出して欲しい。
津田学園選出のプロセスは「地区3勝」「前と前川」が評価された(学院中京は地区1勝)事によるもの。

今回は地区2勝(名電)と1勝「山商」と白星に差がほぼ無く、名電の選手がピックアップされていない。
高校野球にある程度精通している人ならここで「名電には大泉と伊東がいるぞ!」とツッコミを入れるだろう。
ただこれに関しては高野連的には大した投手じゃなかっただけの話。

好投手枠というのは高野連が認めて初めて成立するもの。名電投手陣は杉山や法橋同様そこら辺の有象無象だったのだろう。そのくせ六信や吉田は評価するの本当に意味がわからない。



最後に。この問題を語る上で参考になる選考があったので載せておく。

02春:津田学園が「決勝戦大敗」により、「同一カード2連敗」を喫した愛工大名電に逆転を許し順位を落とす。

これの面白いところは、仮に2枠時代なら中京大中京と愛工大名電が選出されており、地域性ガン無視選考だったという事。

重要なのは地域性をガン無視した事ではなく、「決勝戦大敗」が「地域性」をも上回るマイナス要素になる事。

一見すると「なら19春選抜はどうなんだ!その理屈なら学院中京選出だろう!」の繰り返しになりそうだが、ここで肝になるのが津田学園は前と前川が評価されたという事。

及川、米田、達。高野連に魅入られた者は全てが許される。
前や前川も彼ら同様、存在自体が免罪符だったのだ。

今回は以上。異論歓迎。