日本の没落 | QVOD TIBI HOC ALTERI

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Das ist ein Tagebuch...

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 見ているドイツ紙で、日本についての記事が掲載されたので、その大意を書き留めておく。

 

 記事の見出しは、"Regierungswechsel in Tokio: Die Japan-Falle" とある。直訳では、「東京の政権交代:日本の没落」となるか。記事は続いて、「日本経済はかつて模範であり、世界中から羨望され恐れられていたが、それはすでに終わった。そしてそれは今や改革の遅れがどれほど危険かを示している。」とある。

「…この点で、日本での展開は他の西側諸国への警告である。過去8年間に、安倍首相は、積極的な財政・金融政策と期限切れの構造改革を組み合わせ、日本を恒久的な停滞から脱出させようとした。この戦略は「アベノミクス」として知られている。しかし、その成果は控えめである。今、それはコロナパンデミックとそれに続く世界的不況によって完全に一掃されるかもしれない。月曜日に選出されるであろう安倍の後継者は、世界で最も高い国債比率(GDPの約250パーセント)を含む巨大な問題の山に直面することになる。」

「OECDによれば、現在、日本は世界最高の長寿国である一方で、出生数は19世紀後半のそれよりも少ない。2000年以降、一般労働年齢(20〜64歳)人口は12%減少した。この調子で行くと、労働人口は2050年までに1500万人減少することになる。その結果、他のすべての条件が同じであれば、国の債務は対GDP比で約400%になる見込みである。」

「今日、想像するのは難しいが、1980年代、日本は欧州および米国経済にとって共通のライバルと見なされてた。しかし、1992年に発生したバブル崩壊により、「失われた10年」が始まる。経済成長は止まり、日本企業は巨大な債務負担に苦しんだ。その一方で、経済のグローバリゼーションは当然のように進行した。日本が世界へ門戸を開いたとき、中国、韓国等のアジアの新興国が新しい競争相手として現れた。」

「グローバル化が猛威を振るうと、日本は新たな問題に陥った。それはデフレである。賃金が停滞しているため、消費者物価が下落し、経済発展は鈍化した。日銀は超低金利、政府は一連の長期債務資金調達プログラムで対抗したが、ほとんど役に立たなかった。2010年にデフレを一時的に終わらせたのは、「アベノミクス」であったが、コロナ危機はそのささやかなプラスの効果さえも台無しにしつつある。物価水準は再び下落しているが、国内総生産は長期にわたって2019年の水準を下回る可能性が高い。これらすべてが日本の債務問題を悪化させている。国家予算の持続可能な回復はもはや不可能と思われる。」

「日本が抱える根本的な問題は、不利な人口動態である。労働人口はすでに10年前に減少し始めた。政府は、2000年に定年延長でこれに対抗した。しかし、公式の定年はまだ65歳(男性)または64歳(女性)であり、日本人の平均余命と比べると低い。実際には、企業の80%は、未だ60歳定年制であり、従業員を60歳で退職させ、その後、大幅に低い賃金で非正規労働者として雇用し続けている。比類のない年齢差別が横行している。」

「移民に関しても、日本は長い間、古い考えに固執してきた。つまり、反移民・自国中心主義である。移民へのハードルは高く、それは現在も続いている。しかし、労働力不足により、政府はこれに対応して移民規制を徐々に緩和してきた。現在、主にベトナム、中国、フィリピンからの外国人労働者が工業分野や、ホテル、レストラン、卸売、小売業等に従事している。しかし、今日でも外国人の割合は全従業員のわずか2%である。」

「最後に、日本は、西欧および北米と多くの類似性を有する。人口動態の発展、物価および金利の低下、生産性の伸びの鈍化、公的債務の爆発的増加、そして、自国や自民族への精神的退化である。変化した現実を認められないこと、および、対策が遅れることは高齢化社会の特色かもしれないが、我々はそれに甘んじるべきではない」と。


 以上である。日本経済の現状についての客観的かつ的確な指摘で、特に反論すべき点も見当たらないが、一つだけ。日本の場合、政府や企業が変化した状況に対し的確な対策が取れないこと、および、実際の行動が遅きに失することの原因-というか、日本が抱える諸問題の根源-は、高齢化というよりも、現状に見合った変革よりも既成秩序の維持、あるいは、政財官界の指導者間における人情や忖度といった、公益より私益を優先する人間関係に起因する、非経済性・非合理性にあるような気がする。