外は土砂降りの雨
本格的に降ってきた
ファディガーティー医師からの電話
酷い雨だね - - -
天気にまで見放されてしまったようだ
望みは消えた
次の機会にしましょう
いい天気の日が必ずありますよ
君に言い忘れていたことがある
私の犬が行ってしまった
いつものように二人で散歩をしていたら
若者が現れて
犬の名前を呼んで - - -
ヴァンパという名だった
犬は去る前に 私の顔を見たんだ
何とも言えぬ表情で - - -
「ご老人よ お世話になりました
この若い御主人について行かねばなりません
私を許して下さい」
そう言っているようだった - - -
サヨナラ 友よ
君の友情に感謝する
幸せに暮らしてくれ
そう言って
医師は受話器をおいた
嫌な予感がした - - -
その日の午後
土砂降りの雨のなかを
傘もささずに
暗い湖橋で下車した
一人の男の姿があった
その男は - - -
じっとポー川を見つめながら
冷たい川のなかへと
入って - - -
やがて - - -
川底へと消えていった - - -
彼の亡骸の傍らには
流れついた
金縁の眼鏡が
泥の中で
キラリと光っていた - - - ✨
ファディガーティー医師が
遺してくれた絵は - - -
エレオノーラが愛した
絵でもあった✨
彼女は お産がもとで
1940年に亡くなった
エラルドは
フランスでプロボクサーになったが
成功はしなかった
恩師・ペルージャ教授
ラッテス家の人々
父・母・妹
カルロッタ
皆 収容所で亡くなった - - -
戦火の中を
生き抜いたダヴィデは
フェラーラでの
青春時代を書いた小説を発表して
世界的な作家になった - - - ✨
君は永遠に
還らぬひととなってしまった
あんなに - - -
愛し合ったのに - - -
夏の海辺の避暑地
誰もいなくなったベンチに
腰掛けながら
過ぎ去った時間を想う
君を失った我が身に
冷たい雨が降り注ぐ
このまま此処でこの雨に打たれていたい
流れる涙を
洗い流してくれるから - - -
君はあの男と踊っていたね
ファシストの
あの男と - - -
ずっと君を見ていたんだ
君が望むもの
それは - - - 愛なのか?
愛なしでも生きていけるのか?
俺には - - - もうわからない
エレオノーラ
あの時 君は泣いていた - - -
君のことを愚か者と言った
俺を許してほしい
君が亡くなった - - - 今 - - -
それが - - -
それだけが - - -
心残りなんだ - - - ✨
この絵を - - -
これからも愛し続けていく - - - ✨
君と - - -
亡くなった
ファディガーティー医師が
愛した絵なのだから - - - ✨
フェラーラ物語
原題 : Gli Occhiali D’oro
出演
ダヴィデ : ルパート・エヴェレット
エレオノーラ : ヴァレリア・ゴリーノ
ファディガーティー医師 : フィリップ・ノワレ
エラルド : ニコラ・ファロン
ラヴェッツォーリ夫人 : ステファニア・サンドレッリ
ペルージャ教授 : ロベルト・エルリッカ
カルロッタ : ?
監督 : ジュリアーノ・モンタルド
音楽 : エンニオ・モリコーネ
原作 : ジョルジョ・バッサーニ
「金縁の眼鏡」より
製作年度 : 1987年
日本公開日 : 1990年2月4日
製作国 : イタリア・フランス・ユーゴスラビア