ビジネスチャンスに乏しいベンチャー企業が「波動」に触手を伸ばすのは当然ともいえそうだが、ここ二~三年は、大手企業のほうがはるかに積極的な動きを見せ、巨額の投資をしているといわれる。典型的な事例から紹介しよう。
名古屋市天白区に本社を置く名古屋製酪株式会社(以下名酪)をご存じだろうか。会社の名前は知らずともコーヒーフレッシュの“スジャータ”といえば「ああ、あの」と誰もが知るトップブランドだ。
主力商品はフレッシュのほかに果汁飲料、コーンポタージュ、レトルトカレー、コーヒーなど。五つある製品部門がこぞってシェア争いの上位に加わるほどに消費者から認知され、この不況期にもかかわらず毎年増収増益基調。ちなみに九七年度の売り上げ規模は一千億円に達するもようだ。
その同社が、九四年に波動機器を購入して研究に着手、九六年には名古屋本社と東京の大塚に「波動医科学総合研究所」(以下波動研究所)まで開設した。現在、波動研究所は管理職を除けば五十名の波動測定能力を備えたオペレーターと呼ばれる社員で構成されている。彼らの多くは二十代半ばの男性で、全社員三千五百人のなかから波動機器を使う能力があると認定された精鋭ばかりである。
昨年の三月には十名のオペレーターしかいなかったのだから、一年ほどで急速にその陣容を拡大したことになる。今後もこの動きはさらに加速しそうである。
同社では原料・素材、製品の評価、さらに社員およびその家族の健康チェックに測定器を利用しているが、それ以上にさまざまな企業から測定検査の依頼がひっきりなしにあり、その対応にてんてこまいだという。
「波動測定器を正確に使用すれば確実に結果が得られる。素材の善し悪しもそうだし、身体に異常があれば低い数値を示しますよ」
とは経営的直観によって「波動」に着目したという日比孝吉社長。同社長の斬新な経営手法、経営哲学にはカリスマ性があって、心酔する財界人は数多くいる。ある意味で立志伝中の人物と形容されるゆえんである。それだけに、「日比さんがいうのならまちがいない」と信じる人も多い。それを示すかのように取材中、日比社長の口からは誰もが知る大手企業や著名人の名前が次々と出てくる。はっきりいって、これにはただただ驚き、感心するばかりだった。しかし、同時にこんな発言もあった。
「理屈が解明されていないのだから一から十までというわけにはいかない。疑心暗鬼の部分もある。周りからは『あまり波動、波動というな』との声もある。ただ、これまでの数々の事例を鑑みると納得せざるを得ないし……」
明言は避けたが、ひょっとすると日比社長自身が多少の批判は覚悟のうえで、旗振り役に徹しようと思っているのかもしれない。
さて、同社がこれまでに購入したLFT(ライフ・フィールド・テスター)をはじめとする波動測定器の数はすでに四十合近くにもなり、これに人件費など加えると総投資額は十億円程度にまで膨らむ。事業規模からすれば決して小さな投資ではないが、ここに同社の「波動」に対する姿勢のほどが十分にうかがえる。
しかしこれは同社だけに限ったことではない。取材を進めるうちに建設、食料品、化粧品、繊維製品、電機、小売業などさまざまな業種で上場企業の名前を耳にしなところが実際に取材依頼をかけると、そのほとんどが門前払いもしくはそれに近い対応。とくに、ある大手化粧品会社は取材日直前になって突如のキャンセル。その理由はいまだに闇の中である。
このほか「波動」に関する研究の事実は認めながらも、「ちょっと微妙な時期だから」とかわしにかかった某大手外食産業。ある食品会社と流通会社は「波動」という言葉だけで極度に過敏な反応を示す。まさに取りつく島がないとはこのことだが、こんなことを繰り返すたびに、「具体的な企業名を出すと迷惑がかかるかも」という日比社長の言葉を思い起こした。
「少なくともこれまでに五百合以上の測定器が出回っている。ただ、現時点では、うさん臭さが払拭されていないので、オープンにしたくない気持ちもわかる。それに、もうひとつ大きな理由もあるし」(ライフフィールド総合研究所・藤森数彦取締役業務推進部長)
一体何かと思えば、購入したのはいいが、使いこなせないというのだ。勢い込んで一台購入した某大手通信機器メーカーは、その後音沙汰がないなど、この手の話はそれこそゴロゴロしている。あの名酪でさえも社員のひとりが偶然、適性を見せるまで、ほぼ三ヵ月間はホコリを被っていたという。
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