科学や技術、芸術さらには経営などの分野で素晴らしい業績をあげた人は、みなその背景に独自の感覚や感性に裏打ちされた世界観をもっているものです。
 僕は特に、アルバート・アインシュタインに惚れ込みました。彼は科学における業績のみならず、その個性、ユーモアのセンス、卓越した人間性によっても世界的に有名でした。ここで彼の言葉を紹介しましょう。

「わたしたちが体験しうる最も美しいものとは、神秘です。これが真の芸術と科学の源となります。これを知らず、もはや不思議に思ったり、驚きを感じたりできなくなった者は、死んだも同然です。」
「この世界を、個人的な願望を実現する場所とせず、感嘆し、求め、観察する自由な存在としてそこに向かい合うとき、われわれは芸術と科学の領域に入る。」

 私たちは毎日、三度の食事をし、さまざまな人と接しながら生活しています。しかし、創造的な科学者や芸術家にとっては、自身の好奇心や探究心、感覚を刺激させる「驚き」や「感動」、「美」なども、生きていく上で欠くことのできないエネルギー源なのでしょう。僕はそのような生き方―宇宙のエッセンスを感じて生きること―に大いに憧れました。
 そしてアインシュタインには非常に興味深いエピソードがあります。それは彼が相対性理論を打ち立てる時、その仮説を導く際に、計算間違いをしていたということです。しかし、その(仮説の)考え方そのものは正しかった。つまり、既知の科学法則や原理を基にして計算し論理を組み立てる前に、感覚的にその内容(空間が重力によって歪むこと)をまず理解していた!?ということになります。これには驚かされました。人間存在のコアは、西洋社会を中心に日本でもそうですが重要視されていえる理性や知性ではなく、感覚・感性ではないか?そしてそれこそが創造性の源ではないか?といったことは心理学でも言われていることですが・・・。

【挿絵】(アインシュタインの写真)Albert Einstein (1879-1955)

 日本で「波動の法則」という本がちょっとしたベストセラーになりました。その著者、足立育郎さんは、妹の幸子さんとともに、ある時期、「宇宙の全ての存在・現象は波動の組み合わせで成り立っている」ことを直観し、それを科学的に(デジタルかつアナログに)情報を得て研究活動するようになったのですが彼が得た“情報”は、非常に論理的・体系的にまとまっていて「直観(力)」のもつ究極的可能性を示してくれています。これにもびっくりです。ちなみに妹・幸子さんの方は、宇宙の本質をアートで表現され、コンテンポラリーアートEXPO'89(NewYork)などに入選され、また最近では彼女の講演録をまとめた本「あるがままに生きる」が雑誌で女優・松雪泰子さんに紹介され、他にもたくさんの人々に愛されています。
 これからの時代、どんな立場、状況の方でも役に立つ人間の究極の能力は、直観力でしょう。

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 僕はこの約3年間、人間(の意識)に深く興味をそそられ、自分なりに取り組んできました。図書館などをうまく利用して、まず心理学の本を読みあさりました。しかし、人間に対するより本質的な洞察を得るべく、アメリカのニューエイジや日本の精神世界の本に切り換えました。その中で、現代の心理学にはないけれども非常に重要な概念をここでは紹介します。
○「意識の自由度」…その人の意識がどれだけ自由かということ。逆に言えば、いかに「こだわり」「とらわれ」が少ないかということです。人は何かにこだわったりとらわれたりすると、それだけ視野が狭くなり、視点も固定化されていきます。しかし、そのようにある枠の中で生きるが故の安定感や楽しさもあるのでしょう。創造性という点ではそれは障壁となりますが・・・。どう生きるかも、その人に委ねられている=自由なのです。この自由度と対応するのが「融合度」です。真に自由でグローバルな視野をもつ人は、自分だけ、自分の家族だけ、自分の国だけ、人間だけ、良くなればよいという限定された視点で考え、行動することはないでしょう。また、自由な人は、ものごとをありのままに見ようとします。素直で謙虚です。そうなろうと努めているのではなく、それが自然なのでしょう。自分には分からないことがたくさんあることを受け入れ、よく理解し、あらゆることから学ぼうとしているだけです。どれだけ“意識の調和がとれているか”ということでもあります。
 あまり堅いことは書きたくなかったのですが、これからの地球において、大変大事なキーポイントになることがらだと思ったので“仕方なく”書き記すことにしました。

 そして、、この意識の調和度(自由度・融合度)が、宇宙のしくみ、自然の法則に対する理解(科学的なものも含めて)や美に対する感覚や感性などと大きく強く結びついていることを強く感じます。
 人間の意識がより調和がとれ自由になればなるほど、感覚が洗練され、研ぎ澄まされて自然のしくみや宇宙の本質をより深く理解するようになるということです。

「人間とは、わたしたちが宇宙と呼ぶ全体の一部であり、時間と空間に限定された一部である。わたしたちは、自分自身を、思考を、感情を、他と切り離されたものとして体験する。意識についてのある種の錯覚である。
 この錯覚は一種の牢獄で、個人的な欲望や最も近くにいる人々への愛情にわたしたちを縛りつけるのだ。
 わたしたちの務めは、この牢獄から自らを解放することだ。それには、共感の輪を、すべての生き物と自然全体の美しさに広げなければならない。実質的に新しい思考の形を身につけなければ、人類は生き延びることができないだろう。」
(アルバート・アインシュタイン)

「わたしは、アインシュタインに『あなたはあらゆることが科学的に説明することができると信じているのですか?』」と尋ねました。『ええ』と彼は答えました。『でもそれは意味のないことでしょうね。ベートーベンの交響曲を聞いたとき、これは音波の変化が組み合わさったものだと表現するように意味のないことです』」(ヘドビッヒ・ボルン)


最後に…

【挿絵】(足立幸子さんによるチューニングスケッチ)
▲「時間とは何か?」というテーマでプログラムされた絵(作品ではない)
 時間(と空間)の本質が理解できない限り時空間移動装置(UFO)を製造することはできないらしい。

 いやー、時が経つのは早いもので、もう、六年もの月日が流れていったのですね。とくに後半の三年間はせつなかったなぁー(ムフフ…)。これからも自分がやりたいと思ったことだけをやっていこうと思う今日、この頃ですね。はい。ではでは…

2000.10.9
K.Naoki