ばあちゃん・・・ | はねまるの羽頂天ブログΖ

はねまるの羽頂天ブログΖ

だらしなくたっていいじゃないスか

沖縄のホテルでのお話をもう1つ。

朝はバイキングナイフとフォーク


私は毎回のように卵ばっかり・・・になって

味噌汁入れて、味付け海苔取って席に戻ろうとした。


私の席と料理のテーブルのちょうど間のテーブルに

こ綺麗なおばあちゃんと赤ちゃんが座っていた。

横に来て違和感に気付いた。

「人形や・・・・」 私は唾を飲んだ・・・


横に寝かすと目を閉じる人形。

なんて名前やったかは思い出せなかったが、それ。

すごく綺麗な服も着せてある。

おばあちゃんの席の隣りの席に普通に座らせてあった。


「ああ大事にしてる人形なんやろうな・・・」

その位の感覚で通り過ぎ自分の席に座った。

軽く右を向くとおばあちゃんの席が見えて

例の人形の椅子の背中側が見える。


そして私の左のテーブルはフィリピン語を話す若い女の子のグループ。


料理のテーブルから歩いて来る人全てが

驚いた顔で私の前を通り過ぎて行く・・・。

笑いながら通り過ぎる人も多く・・・

私は声を出した。

「まぁ、色々あんねやっ!」 そう言って朝食を食べた。


そのすぐ後のおばあちゃんの行動に少し動揺したが

食べ続けた。

箸でご飯を人形の口に運んでいるのだ。

運んでは拭き、運んでは拭き・・・

完全に自分の朝食を後回しにしている様子。


フィリピン語の女の子達はクスクス笑ってた。

子供達なんかは通り過ぎてから 『人形やったね!』 って親に話す。

私は隣のテーブルにいる・・・。


1人のホテルの従業員のおばさんが近寄る。

うん。人形を完全に人間として扱う態度で・・・だ。

おばあちゃんはそのホテルのおばさんに話す。

『熱があって、食欲がないの・・・。』

『そうなんですか・・・早く良くなるといいですね。』

しばらく会話は続いた。


食べ終わり、コーヒーを軽く飲んでホールを後にした。

その夜、私はホテルのBARで沖縄っぽいカクテルを楽しんでいたカクテルグラス

バーテンさんに聞いてみた。

今朝こんなおばあちゃんがいてたよ。って。

バーテンさんは 『人形ですか?人型ですか?』 と聞いてきたので

「うん。普通の人形さん。」 答えると

『そうなんですか?1人ぬいぐるみを持ってよく来るお客さんがいるらしいですよ。』

「ぬいぐるみ?」

『はい。オランウータンのぬいぐるみを抱いて来て本当の子供のように接しているらしいです。』

「間違いない。その人やわ・・・。」

そんな話をした。

バーテンさんは続けて話す。

『若い頃に自分の不注意で子供を亡くしたらしいんです。』

『完全にぬいぐるみを子供と思い込んでるようで・・・。』

・・・

・・・

私はグラスのカクテルを飲み干した。

「そっかぁ・・・。」 そんな言葉しか出なかった。


3杯目のカクテルを飲みながら私の脳裏に浮かんだ光景・・・

川の土手に座り、草をちぎって・・・

それを電線に見立てて繋ぎ、時間を潰していたあの日の自分自身。

独立した時の私の姿だった・・・

子供が産まれると言うのに仕事もなく

土手で作業服を汚して帰っていたあの日の光景だ。

仕事が無い現実を受け入れられなかった。

草をちぎって・・・本当に仕事をしているような安心感があって・・・

日暮れまでそうやって時間を潰したあの日の私。


現実をどうしても受け入れられない・・・

受け入れたくない・・・

そんな思いが見せる幻。

そこから逃れられない苦しさも

あの日の私を追い詰めた・・・。


おばあちゃん、それでいいと思うよ。

現実から逃げ続ければいい。

私のように若くはない。

もう少しの辛抱だ。

長い長い幻想の世界から解き放たれる時

そこで本当の子供に会える。

・・・必ず。


この出来事も私の眼には焼き付けられるだろう・・・。



はねまるの羽頂天ブログ