アドルフ・ヴェルフリ[二萬五千頁の王国]展
アドルフ・ヴェルフリ
という画家をご存知ですか?
スイスの芸術家。
31歳で統合失調症と診断され、精神病棟に入院してから、66歳で亡くなる4日前まで作品を描き続けた人です。
どんな作品を描いたかと言うと、
写真は内覧会で特別に撮影させて頂いています。
手前:『メキシコ王,カルロ5世陛下の愛人の屋敷.アメリカ.-全能にして父なる神の事故1911(『揺りかごから墓場まで』第4冊377-378貢)』
左:『ニュー=ヨークなホテル・ウィンザー1905』
右:『ホテル-シュテルン〔星〕』
手前:『ホテル-シュテルン〔星〕』
とにかく細かい!!
画面一面に絵と文字と音符がぎっしり。
全て鉛筆と色鉛筆で描かれています。
しかもこれらは全てヴェルフリの自叙伝なのです。
それも架空の自叙伝。
最初の頃は絵が全面に描かれたものが多いのですが、だんだんと文字が多くなっていき、
最晩年に描かれた『葬送行進曲(1928-1930)…番号のない16冊の冊子』は、画面のほとんどを文字が埋め尽くし、絵はほんの一部だけ。
ヴェルフリが生涯で描いたこうした自叙伝の数はなんと2万5千枚にも及びます。
亡くなる4日前には、涙を流しながらもう描けないことを嘆き、『葬送行進曲』は未完のままに終わったそうです。
そんなヴェルフリを画家のジャン・デュビュフェが発掘し、
「特別なアートに特別な名前をつけたい」
と、“アール・ブリュット Art Brut” (Art=芸術 Brut=ワインなどが生(き)のままの様子のこと)という言葉が生まれました。
その後、“アウトサイダーアート”と英訳されるようになり、
今では、“アール・ブリュット”=“アウトサイダーアート”=“障害者アート”
のような、本来の意図とは違う解釈がなされていることが多いように思います。
(そもそもアウトサイダーアートという言葉は個人的に嫌いなので、あまり使わないようにしています)
“アール・ブリュット”
特別な生(き)のままのアート
その作品のパワーは、想像をはるかに超えていたし、絵から音楽も詩もちゃんと聞こえてきたのです。
生まれ育った境遇やその後の人生も決して明るいものではなかったはずなのに、作品の前に立つだけで踊り出したいほど明るく温かな気持ちにさせてくれました。
“アール・ブリュット”=特別な生(き)のままのアートがどのようなものなのか、
是非その目で確かめてみてください。
名古屋市美術館で本日から始まっています。
*写真は全て内覧会で特別に撮影させて頂きました。
【アドルフ・ヴェルフリ[二萬五千頁の王国]】展
会場:名古屋市美術館
会期:3月7日〜4月16日
時間:9時半〜17時(金曜は20時まで)
休館日:月曜日
東京での展示は
会場:東京ステーションギャラリー
会期:4月29日〜6月18日