子供の頃、夢中でみてたドラマ。
まるで少女マンガやおとぎ話にでもでてくるような、この世のものとは思えないくらい素敵な、皆が憧れるかっこいいパパを演じてらっしゃった田村正和さん。


ドラマの中にいらっしゃるだけで、実際には存在しないのではないかと思ってました。

あり得ない、、
くらい素敵だったから、、


雲の上の人。


女優になってからも共演させていただけるなんて高望み過ぎて微塵も思ってなかったのですが、、

チャンスが訪れて、、

なんと不倫の相手役をさせていただいたのです。

『夫婦』というドラマです。

幸せをずっと待ってる待田幸子さん役。
ウェディングプランナー。

娘さんの結婚式打ち合わせにやってきた父親に、段々惹かれていって、大好きで大好きで、いけないと思いつつ、どうしても好きになってしまうという役でした。


実際にお会いした田村正和さん。

目の前で動いて台詞を仰ってるのを信じられない思いで眺めてました。

雲の上の人が目の前に現れた、言い様のない不思議さに包まれて、、、


寒い中、肩からガウンを羽織り、専用グラスでドリンクを飲んでらしたり、、

NGが全くなく一発で本番を決めるとスーっと現場から離れていかれる姿。

どこを切り取ってもかっこよい思い出しかありません。


私も若気の至りでいろいろ質問攻めにしてしまったのですが、

奥様とのお話を時たま聞かせてくださり、とても大切に思ってらっしゃるのが伝わってきて、当時の私のような年齢の女性との恋愛は、役とはいえとても苦手そうでした。



電車に乗って移動することもあるという私に『そういう暮らしが一番いいんだよ。不自由ほどつまらないものはないよ』と仰った時、田村さんの人気による不自由さを少し垣間見た気がしました。


本番時の集中力、台詞を自分のものにするという魔法、
そしてなによりプロフェッショナルであるという在り方を教えてくださった先輩です。


数年後  

京都の撮影所で再会した時、嬉しくて嬉しくて
『田村さーん‼️』
と駆け寄ったら

『君はいつも元気でいいね』

と独特なニヒルな素敵な微笑みをくださいました。


それから間もなく、
表舞台から一線をひかれたということをニュースで知りました。


そして昨日飛び込んできた訃報。
この世の去りかたも何もかもが田村正和さんらしくて、、
頭が下がる思いでいっぱいです。


田村さんは作品の中に命を注ぎ、
雲の上に戻っていかれたのですね。


大先輩とのお別れは
寂しいものです。


でもそれを上回るほど感謝の気持ちが大きい。

田村正和さんの生き方、歩みかたは誰にも真似できないもの。

少しでも
田村正和さんとご一緒させていただけたことは私にとっての誇るべく貴重な財産となっています。


雲の上の田村さんに心から感謝を捧げて。


ご冥福をお祈りします。