「この世界がおわるとき。」
何をいきなり・・・
と彼は、苦笑いを浮かべた。
此処は『The world』。
すなわち、ネットゲ-ムの世界だ。
終わりなど、誰が予想出来ようか・・・。
それでも。
ハセヲは言葉を繋ぐ、常に先行くオ-ヴァンを離さないかのように。
それでも、
「俺は、あんたと居たい。」
この言葉の意味を紡いだハセヲのオ-ヴァンへの想いの
終盤はないのだ。
「この世界がおわるとき。」
何をいきなり・・・
と彼は、苦笑いを浮かべた。
此処は『The world』。
すなわち、ネットゲ-ムの世界だ。
終わりなど、誰が予想出来ようか・・・。
それでも。
ハセヲは言葉を繋ぐ、常に先行くオ-ヴァンを離さないかのように。
それでも、
「俺は、あんたと居たい。」
この言葉の意味を紡いだハセヲのオ-ヴァンへの想いの
終盤はないのだ。
―ショ-トメ-ルか・・・―
この感覚に、相変わらず慣れが聞かないなと自嘲しながらもメ-ルを開く。
「っ・・!!?オ-ヴァン・・・」
タメ息にも似た独り言は、吹き抜けていく風だけに知らされていた。
文面は短く記されていた。
―来い。―
・・・と。
エリアも目的も記されていないメ-ル。
それでも、これを送った彼、オ-ヴァンが何処に居るのかが解る。
志乃の時ですら感じなかったというのに。
少し物思いに耽っていると、またしてもショ-トメ-ルだろうか?
それを見ると・・・あ~・・・・。と、今度はタメ息をついた。
「せっかちだな。アンタ・・・今、行ってやるよ。」
そして、あの誰もが恐れる『死の恐怖』の微笑を引き出せるのは、
あの男。
オ-ヴァンだけだというのは、またオ-ヴァンしか知らぬ所だ。
「・・・・・」
マク・アヌとは、また違った光景に瞳を奪われる。
いつ来ても此処は・・・。
ジャリ・・・・―――
かすかな物音にPKKの『死の恐怖』としての神経が働いたのか、愛刀を構える。
「久しぶりだというのに、結構な歓迎の仕方だな。」
「あ。・・・・・・・・・わりぃ。」
「いや。構わない。ハセヲ・・いや、『死の恐怖』と言った方が良いか?」
久々に逢ったというのに、変わらない彼の言動。
その事に、ハセヲは嫌な胸焼けを覚えた。
「うるせぇ・・」
悪態をつくハセヲを目の前に、オ-ヴァンは瞳を細めた。
そして、あの初期の頃に初めて逢った時から。
「変わっていないな・・・。」
「?」
首を傾げ、オ-ヴァンを見やると、
自分に向けられた優しい微笑みに思わず、鼓動が高鳴るのを感じた。
「そういう・・・顔を背けるのも。」
「っ!・・・てめ、降ろせよっ!」
「悪いクセだ。」
唇に触れる、柔らかい感触を味わう様に、
ゆっくりと触れ合っては、また離れる。
その感覚についていけなくて、
ハセヲは抱き上げられたオ-ヴァンの腕に、軽く爪を立てた。
この爪を立てるのがハセヲの合図だ。
「・・・立てるか?」
「・・・バカにすん・・っ!!!」
意地を張るも、身体は正直と言った所だろう。
オ-ヴァンは、くつくつ、と満足気に喉を鳴らした。
またしてもハセヲは顔の温度が上がっていくのが解った。
こうやって、からかわれるのが彼にとって最大の屈辱だというのが解ってやっているのだ。
意地の悪い男だ。
「その意地の悪い男に抱かれたのは、何処の誰だ?」
「!!!!」
胸内で思っていた事が、いつの間にか口に出ていた様だ。
「なぁ・・ハセヲ。」
「・・・んだよ?」
いつになったら、この男を越えられるのだろう。
「夜は長いぞ?」
「!!!!!」
ハセヲがオ-ヴァンを越える日は、まだ遠い未来なのだろうか。
またしても火照った顔を誤魔化す様に、そんな事を考えていた。
忘れていた、訳じゃない。
パイとのレイヴンで交わした契りと、憑神の掟。
ただ、この時の俺は、勝利という言葉に貪欲になっていた。
――――――――――――――――――――
俺が、憑神となりアリ-ナで勝利を収めた。
どうだ、とばかりに拳を握り締め、観客席を向くと、目に映ったのは。
あいつの。
パイのなんとも言えない、寂しそうな表情だった。
掟。
例によって、レイヴンのHOMEに呼び出され、今に至る。
ク-ンはいつもの様に、のほほんと喋りを辞めないし、
パイに至っては口を利くどころか、終始、無言を貫いていた。
それどころか、ハセヲの目すら見ようとも。合わせようともしない。
「おい。パイ。」
あいつが振り向いたら、いつもの様にからかってやろうと。
そう思っていた。
―――――――――――――――――
ハセヲが私を呼んだ。
何故、私が。あいつに!
こんな神経を使わなければならないのだろう。
はぁ・・・と口から遠慮無しに出てくるタメ息を鷲掴みにして
目の前で、のん気にしているク-ンにぶつけてやりたい衝動に駆られる。
「なに・・・よ。」
いつもの様に、強気に。私らしく。
そう振舞ったはずだった。
―――――――――――――――――
「お・・・おい。パイ・・?」
いつもの強気な彼女の瞳には、炎が常に存在した。
だが、今はソレがない。
茶色の赤みを含んだルビーにも似た彼女の。
パイの瞳には、うすっらと涙が浮かんでいるのが解る。
すっ・・と視線を落とすと、彼女が拳を握り締めているのが解る。
コレは。
戦闘中も、痛い時、苦しい時。
こう拳を握り締め、一人でじっと耐えるのが彼女のクセだった。
「自分では気付いてないみたいだな・・・」
誰に返すでもなく呟くと、彼女は精一杯の虚勢を張り、首を傾げる。
・・・はぁ・・・。
今度は、ハセヲがタメ息をつく。
「なぁ・・・俺が、お前を泣かせる様なこと。何かしたかよ・・・?」
「・・・・――憑神・・。」
「あ?」
「アンタ。アリ-ナでっ・・・!」
アリ-ナ。
憑神。
その2つを聞いて浮かんだ。観客席に居たパイの表情。
だが、それもスグにパイの上げた声でかき消される。
「アンタ。約束したわよね!?まだ憑神出来るかどうかも解らないアンタが・・っ!!
どうして!!・・・・・もうっ!!!!!」
ダン!とハセヲの胸に叩き付けられたパイの拳は、
それほどまでに威力は無く、力なく垂れ下がっていく。
「・・・もぅ・・・・・。」
「(牛かよ・・・。)・・・・・・解った。悪かった。」
ハセヲの、この弁明が今の彼女にどれだけ効果があるのか・・。
「もう。心配掛けないで。」
弱く。それでも胸を締め付けられる程に強くパイが俺の指先に触れる。
「ったく・・・どっちが掟破りなんだか・・・」
そんな彼女にハセヲは、また軽い眩暈を覚えたのだった。
彼の中に存在する
私という法則 2
―――――――――――――――
目が覚めると、真っ白な部屋に寝かされていた、
よくよく意識を働かせてみれば、なんてことはない。
レイヴンの休務室だ。
「お。気がついたのか?」
「ク-ン・・・」
外されていた度の高い眼鏡を掛けなおすと、苦笑いを浮かべたク-ンの表情が目に映る。
「はぁ・・・大分、意識が飛んでたみたいね。」
リアルとは時間の流れは違うものの、時間を惜しんでいると、いつもの憎たらしい・・・『あの声』
「なんだ・・・目ぇ覚めたのかよ。もういいのか?」
「お陰様で。」
歯には歯を。目には目を。憎まれ口には・・・憎まれ口を。
やられたらやりかえす。言われたら言い返すのが、パイの座右の銘である。
つっけんどんに答えを返し、フン!と顔を背けると、思いもよらぬハセヲの言葉。
「へぇ。ま、あんたには、そう元気で居てもらわねぇと、な。」
初めて・・・。
フ、と。頬が緩む。
「おい。パイ。聞いてんのかよ?」
それに気付いたのか、照れ隠しの様に私の額に手を押し付ける彼の仕草。
「初めて。」
「あ?」
「私の名前。呼んだわね。ハセヲ?」
今度は彼が、私から顔を背ける。
そんな彼の横顔を見ながら、今だけ、もう少しこのままでと思う自分の思いに気付かぬまま・・・。