猛暑の中、ずっと咲き誇っていた百日紅(さるすべり)の花がようやくしおれてきた。にぎやかだった蝉(せみ)たちの合唱は、ツクツクボウシの独唱になり、代わって草むらの虫たちが美しい音色を奏でる


 九月に入ってからも続く厳しい残暑は、さすがに体にこたえたが、猛暑は一転、きのうは秋らしい涼しさだった。冷房ではない自然な風の方がよく眠れるし、窓の外から聞こえるコオロギたちの鳴き声が心地よい


 虫の音色を楽しむのは、日本人独特の感性らしい。秋の虫の声を聞くイベントなどは他国にはないはずだ。医学博士の角田忠信氏の説では、日本人は言葉の音を感じる左脳で虫の声も聞いているそうだ。外国人は虫の声を雑音と感じる人が多いという


 <影草の 生ひたるやどの 夕影に 鳴くこほろぎは 聞けど飽かぬかも>。万葉集の時代、秋に鳴く虫を総称してコオロギと呼んだ。鳴き声で区別するようになったのはもっと後になってからだ


 コロコロコロと高い音のエンマコオロギ。ル、ル、ルと単調で微妙なカンタン。フィリリリと繊細なクサヒバリ…。最近では、インターネットで聞いたばかりの虫の種類を音声で確認することもできる。その種類の豊富さに驚かされる


 ふと気が付けば少しずつ日が短くなってきている。秋の彼岸も近づいてきた。熱中症で多くの人が倒れた尋常でない暑さも、もう少しの辛抱だ。


 筆洗 2010年9月16日


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