きのう、ツクツクボウシが鳴いているのをこの夏、初めて耳にした。土から出て間もないのか、鳴き声はどこかぎこちない。耳を澄ましていると、鳴きやんでしまった


 <法師蝉(ほうしぜみ)の初蝉なれや鳴きをはる>(中村草田男)。法師蝉は秋の季語。立秋を過ぎてから鳴き始める「秋の使者」の歌声を聴くと、吹く風にもどこか夏の終わりの気配を感じる


 ちょうどお盆休みの今週は、朝の通勤電車もすいていて「残留組」としては快適だったが、就職先が決まらずに必死に動き回る学生には、季節の変化を感じるゆとりはないだろう


 文部科学省の調査では、今春大学を卒業した学生の就職率は前年度を7・6ポイントも下回る60・8%にとどまった。卒業しても就職、進学しなかった学生も六人に一人に相当する八万七千人にのぼる


 留年した学生も十万人を超えた。海外の大学に留学するために留年する学生なども含まれるが、「新卒」でなければ就活に不利だと考え、留年した学生が多かったようだ。就職留年した場合、授業料の減額など支援策を打ち出す大学もあるほどだ


 政府は、国家公務員の人件費を二割削減するために、新規採用枠を四割近く削減する。新規採用を年間三千人減らせば、十五年間で千七百億円が削減できると試算するが、しわ寄せを受けるのは就活中の若い世代だ。若者を漂流させる社会に未来はない。


 中日春秋 2010年8月14日筆洗


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