把瑠都が大関に昇進する前、近所の尾上部屋で朝げいこを見学したことがある。鍛え抜かれた二つの肉体が、激しくぶつかり合う迫力にただ圧倒された


 印象に残ったのは、把瑠都に打ちのめされ、泥だらけの幕下力士がしぶとく食らいつく姿だ。強くなろうと必シにけいこする若者を見て、相撲の魅力を再認識した


 尾上部屋は鉄筋四階建てに生まれ変わり、十二日には横綱白鵬の土俵入りで門出を祝った。横綱審議委員会の鶴田卓彦委員長が、野球賭博問題に関連して発言したのは祝賀パーティーの席上だった


 「そういうことがあれば、横審として引退勧告します」。発言に波紋が広がったが、否定を翻した大関琴光喜をはじめ、二十九人の力士が野球賭博をしたことが明らかになった。想像を超える広がりに暗たんとさせられる


 琴光喜の師匠の佐渡ケ嶽親方はきのう、名古屋場所を謹慎して休場させたいと申し出て、協会も了承した。現役の大関が、暴力団と関係の深い違法な賭博をしていたとしたら、一場所の自粛で済む話ではないはずだ


 ワールドカップで歴史的な勝利に沸くサッカー界とは対照的に、不祥事が続出する角界。日本相撲協会は文部科学省から組織運営能力を疑問視される始末だ。力をつけるため、苦しいけいこに耐える若者に顔向けできるのか。「国技」の名は返上し、出直してもらいたい。


 筆洗 2010年6月16日

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