<ニュース価値は距離に反比例する>。これは、この業界で時折、耳にする“法則”だ。無論、すべてには当てはまらないが、一般に、遠くの大火より近くのぼやの方により強い関心が寄せられる傾向は確かにある


 例えば、新聞に「メタボ」などという見出しがあると、その記事にすぐ目が行く。これも、その法則で説明がつくように思う。なにせ、わが目より、せり出し加減が気になる腹部までの距離、五十センチもない


 このニュースも、しかり。東大教授らが、体内で脂肪のもととなる物質ができるのを妨げたり、脂肪を溶かして減らしたりする作用を持つタンパク質を発見したのだという


 その名は、AIM。英語のaimは「狙う」の意だが、まさに肥満を狙い撃つ新薬開発につながる可能性もあるというから朗報だ。もともと体内にあるタンパク質だから副作用もないという。そんな新薬が実現すれば、世界中、特に肥満が社会問題化している米国などでは大歓迎されよう


 ただ、この手の話には少し心配な面もある。ダイエット中の人というのは、食べたい物を必シでがまんするなど、ギリギリで誘惑と戦っている場合が多い。換言すれば、その苦行に終止符を打つ理由を常に探しているわけで…


 まだ見ぬ新薬に期待しすぎるのもよくない。少なくとも当面は<明日の百より今日の五十>を旨としておくに限る。


 中日春秋 2010年6月10日

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