きょう第九十四代の首相に就任する菅直人さんは、一九九六年に橋本内閣の厚生大臣として入閣。薬ガイエイズ事件の究明の先頭に立ち、一気に知名度を高めたが、就任時には反対する仲間もいたという


 最も強硬だったのは伸子夫人だった。著書『大臣』で菅さんは、その理由を明かしている。「大臣なんかになって浮かれていたら、選挙で落ちる」。実に単純明快である


 市民運動の現場から政界を目指した菅さんは、八〇年に衆院選で初当選するまで国政選挙で三回続けて落選を経験。当選後も小所帯の政党に所属していた。選挙区で支持者と日々接していた夫人は、慢心を心配したのだろう


 いとこ同士で一つ年上の姉さん女房。十年ほど前、女性スキャンダルが発覚した時には「わきが甘いのよ。バカタレ」としかりつけたことも。あの舌鋒(ぜっぽう)鋭い菅さんが議論では夫人に負けることもあるほどだ


 首相就任が決まった日、伸子さんは「『おめでとう』というより、『ご愁傷さま』かもしれません」と語った。長年寄り添った夫婦でなければ、言えない本音かもしれない


 支持率は「V字回復」しつつあるが、鳩山政権の課題はそっくりと残っている。「脱小沢」の戦略だけで難局を乗り切れるはずもない。いつか総理を辞する時、夫人はどんな声を掛けるのだろうか。世襲ではないたたき上げのしたたかさが試される。


 2010年6月8日筆洗

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