
「稀なほどに美しい」 と社交界でも評判の英伯爵家の嫡子
稀は、その華やかな外見に反して、
出生の秘密を抱え孤独の中で生きてきた。
一生ついて回る名前に隠された父の悪意 ――
稀なほどの罪の中から授かった子。
父に疎まれながら生きる中、稀は不思議な力をもつ満智流と出会う無垢な心を持つ満智流に稀は急速に惹かれていくが、
周囲がそれを許すはずもなく……。
互いを求め合い、運命の波に逆らう二人を待ち受ける未来とは?
ビープリの新人さん、デビュー作。
別のビープリ文庫を買った時に、試し読みペーパーが付いていて気になった作家さん。
無垢系の受けが大好物の私のツボにハマった。
不思議な能力を持つ受(満智流・みちる)はその能力ゆえに見世物になっていて、可哀そうな身の上。
それを攻め(稀・まれ)に救い出され、人として扱われ、一途に愛するようになる。
攻めもまた出生の秘密を抱えていて、寂しい魂同士が惹かれあう。
と、王道中の王道ではあるけど、やっぱり王道はいい。
こういうお話だと、受けに比重を置きがちだけど、
容姿から出生、その他のエピソードは全て攻めの方。
そしてそれらが分かりやすく、展開もスムーズ。
攻めを慕う弟や、大親友なんかも出てくるけど、
余計な捻りを入れず、エピソードに懲りすぎることがないのがいい。
おかげであちこちぶれることなく、ストーリーを追える。
父親とのエピソードになるとネタばれなので書かないが
これまた一つのお話しできそう(悲劇だから書いても読まないけど)。
受けの指先に不思議な力があるんだけど、
それに関してもただの出会いのきっかけ程度で、
だからって何かの役に立つわけでないのが、残念なような気もするが、
そこを膨らませると邪魔になりそうなので、これでいいのかも(笑)
とにかく、余計なエピソードは極力削ってるから、読み手には伝わりやすい。
作家さんとしては、もっと書き足したかったかもしれないけど
読み手としてはこのくらいでちょうどいい。
書き手が満足した作品というのは、読者にとってはゆとりや余白が感じられなくて
窮屈な作品になってしまうこともあるのでね。
デビュー作というのは作家本人も編集さんも力入れてるので
概ねいいお話で、2作目からが本当の勝負なんだけど
このお方のは次回作も買ってみようと思う。
アニメイトで買ったらペーパー付いたんだけど、売り切れで買えなかったのが残念。