もう約45年前になる。昭和52年刊になっているから、私は小学生だ。よく立ち読みをさせてもらった駅前の本屋で、夢のような出会いがあった。Gun誌だ。それも44マグナム特集だ。
「ドーベルマン刑事」で初めて知った44マグナム。ダーティハリーや草刈正雄の「華麗なる刑事」などでも登場し、子供心に大いにあこがれていた。MGCのモデルガンは持っていたが、実物は見たことがなかった。
それが雑誌に出ているのである! 美しい写真、読み応えのあるレポートとともに。当時まだ駆け出しのイチロー・ナガタ、永田市郎氏が、初めて44マグナム、S&W M29をレポートした号だ。
マンガでは壁に大穴をあける、車のフロントを破壊する、なんて描写がされていたが、実際はブロックを破裂させる程度(程度だと!?)とわかった。それでも興奮したね。次は音が聞きたい、撃ってみたいと思ったなぁ(これはそれから20年後にグァムで実現する)。
この初めて見る雑誌、これは間違いなく大人向きの雑誌だが、もうゲットするしかないぜ! 金に糸目はつけないぜ!、と意気込んだが、裏表紙の価格を見てちびりそうになった。600円……。当時はジャンプが130円くらい(?ちょっといい加減)、文庫本が200円(?)、なんて時代である。今の感覚では2000円くらいか。こりゃ買えない、と思った。まさしく後ろ髪引かれる思いでいったん本屋を後にした。しかしどうにもあきらめきれず、あまり仲の良くなかった姉に、どうしても欲しい雑誌があるのでお金を貸してほしい、と頼み込んで貸してもらい、買うことができた。
以来、Gun誌は毎月チェックを入れ、内容がいい時はなんとかがんばって買った。本当に私の宝物だった。イチローさんの文章にも大いに感銘を受けていた。600円は高かった(月のおこづかいが500円だ)が、あんなに雑誌に夢中になったことはなかったと思う。そんな体験があったからだろう、私は大学卒業後はとある雑誌社に就職した。仕事をする中でもGun誌のこと、イチローさんのことは常に意識していたように思う。
その後、何十年もたち、古本屋でGun誌バックナンバーが100円で売られているのを見た時は、悲しいよりもうれしかった。気になった号はもうバンバン買ったね。これは理屈抜きで本当にうれしかったな!
自分が作った雑誌にはあまり思入れがなく、捨ててしまったものもある。しかし、Gun誌、あるいは初期のコンバットマガジンなどは今でも大事に私の本棚に置かれている。時々手に取ってみるが、あの頃の思いがよみがえってくるから不思議だ。今は何でも手に入る、何でも目に入る。しかし、あの頃感じた胸の高鳴りはもうない。