今の家に引っ越してきて
少し経って
ハヤを身ごもった
家のすぐ脇にある
小さな電柱を見て、思った
こんな電柱があることが
ダウン症児を授かった原因なのか
引っ越しをしなければ
今の、この家に
引っ越してこなければ
ダウン症児は生まれなかったのか
理由もなくダウン症児の親にされた、という
理不尽な現実が許せなかった頃
理不尽に、恨めしく見ていた
古ぼけた木の電柱
「だぁーっ♪」
電線にとまる小鳥を
嬉しそうに指さす、ハヤの笑顔
抱っこしている腕の中で
落ちそうになるくらい揺れて
「だっ!だぁーっ♪」
はち切れそうな、笑顔
例え本当に、この電柱が
”原因”だったとしても
結局、何も変わらない
今、神様の魔法で
引っ越しをしなかった未来を
ハヤがいない、かもしれない未来を
選び直せるとしても
私はきっと、それを選べない
だから
誰かを羨んだり、卑屈になったり
未熟な私は、まだまだ
そんなことが沢山あるだろうけど
今まで、歩んできた道を
今は、後悔しない
”原因”は、わからなくても
”答え”は、今、ここにあるから
この笑顔が、この腕の中に
咲いているから
私が、一番望んでいた
穏やかな毎日が
今、ここにあるから