あらすじ
NHK「わたしの日々が、言葉になるまで」からスピンオフ書籍が誕生!番組は、「大きな仕事をやり遂げたときの気持ち」や「ケンカのあと、仲直りのきっかけの言葉」など、日常の中にある一場面を取り上げ、小説や歌詞、漫画のセリフなどを題材に表現の妙を味わう教養バラエティ。本書では、番組にもゲストとして出演していた本屋大賞受賞作家の町田そのこさんを著者に迎え、言語化に関する57の悩みに答えていただきました。


ひと言
図書館で見つけて「あっ 町田 そのこさんの本だ」と思って借りました。読み終えて、うーん、悪くはないのですが、自分が求めている町田 そのこさんの本ではないような気がしました。町田 そのこさんごめんなさい。

かつては、一度の手紙でできるだけ多くの気持ちを伝えようとしていました。だから、まずは自分の気持ちや考えを整理するところから始めなければなりませんでした。自分の気持ちと向き合う時間が必ずあったのです。でも、今は思ったことがあったら、とりあえずポンと送ってしまう。送れてしまう。「やばいよね」だけ書いて、相手から「わかる」と返信があれば、それだけですべてが伝わった気になってしまう――。そんなやり取りを続けていると、自分の感情にしっかり向き合っていないことに気付かないまま、流してしまうくせがついてしまいかねません。自分の感情のかたち、色合いや性質というのはじつは不変ではなく、少しずつ変わりゆくものです。ハツと気付いたときには、感情と上手く付き合えなくなってしまうかもしれないのです。
(第1章 自分を整える)

きっと流されがちなタイプの人は、内容の妥当性は別として、相手の熱意みたいなものを感じたら、それに押されてしまうのではないでしょうか。強く言われると圧倒されてしまう。でも誰だって、急に熱いものを飲まされて、「はい、どんな味でしたか?」と迫られたら、とっさに返す言葉は見つからないでしょう。だって、熱すぎたら味なんかわからないから。ですので、熱が冷めるのを待って、落ち着いてからもう一度飲んで考えてみる時間が必要です。流されること自体はもう仕方ない。でも、「その意見、いいと思うし、私もそうかもなって思い始めている。だけど、もうちょっとだけ考えさせて」と一呼吸置く時間をもらいましょう。他人の意見を一旦受け入れて、自分の中でじっくり検討してみることができる人は柔軟な人だと思います。
(第1章 自分を整える)

自分が伝えたいことを100パーセント伝える難しさはもちろんですが、伝達率80パーセントでも、80パーセントなりにいいところがあるようにも思います。そこから新たに生まれ、広がっていくものもあるはずですから。だから、まずは気持ちを伝えること。誤解や言葉足らずを恐れすぎて、言葉にすることに二の足を踏むのはもったいない。100パーセント伝わらなくても、ゼロではない。きっと、あなたの言葉を待っている人はいます。
(おわりに)