あらすじ
 高校を卒業し、晴れて京大生となった成瀬あかり。一世一代の恋に破れた同級生、達磨研究会なるサークル、簿記YouTuber……。新たな仲間たちと出会った成瀬の次なる目標は“京都を極める”! 一方、東京の大学へ進学した島崎みゆきのもとには成瀬から突然ある知らせが……!? 最高の主人公に訪れる、究極のハッピーエンドを見届けよ!

ひと言

楽しく読ませてもらいましたが、1、2作目のような驚きがあまりなかったのは少し残念でした。(実家が北白川)の章に出てくる森見 登美彦。「太陽の塔」を読んだのは2010年4月、「夜は短し歩けよ乙女」に至ってはこのブログを始める前に読んだみたいで記録・記憶に残っていません。もう一度借りて読んでみようと思いました。また(実家が北白川)の章に「ご当地ベーカリーのページを例にとると烏丸御池、河原町三条、千本丸太町、大宮松原、宇治の黄檗と、…」とあり、烏丸御池(ル・プチメック 黒メック)、河原町三条(志津屋)、大宮松原(まるき製パン所)、宇治の黄檗(たま木亭)はまず間違いないよね。千本丸太町って(コネルヤ?)と変なところがとても気になりました。


「わたしは、早田くんがいたから生きてこられたの」こんなことを言ったらみんな大げさだって笑うだろう。だけど、わたしにとってはまぎれもない事実だ。わたしの歩いてきた道を振り返れば、どこにだって早田くんとの思い出が残っている。成瀬さんはピースをやめ、笑みを残した穏やかな顔でうなずく。「きっと、それが彼の役目だったんだ」「役目」わたしは思わず声に出していた。こっちに向かって静かに手を振り、脇道にそれていく早田くんの姿が見える。投げ出したのでも逃げ出したのでもなく、役目を終えた。そう思ったら早田くんへの感謝がこみ上げてくる。せめてひとこと「ありがとう」と伝えて別れたかった。「まだまだ人生長いんだ。いつか再びめぐり逢うこともある」わたしの思いを見透かしたように成瀬さんが言う。
(やすらぎハムエッグ)

わたしが大津を離れたあとも、成瀬は新しい仲間をたくさん見つけている。圧倒的なまぶしさで、まわりをいっぱい照らしている。だけどこの二日間ではっきりわかった。成瀬のために、わたしにしかできないことがある。みんながこたつに向かってぞろぞろ歩き出す中、わたしは成瀬を呼び止めた。「ねえ、成瀬」成瀬は立ち止まり、真顔で振り返る。「わたしも二百歳まで生きようと思うの」中学生のとき、二百歳まで生きるのは難しいのではないかと指摘したわたしに対し、成瀬は「島崎も含め、その頃にはみんな死んでるから確かめようがない」と答えた。あのときのわたしは納得してしまったけれど、先のことなんて誰にもわからない。「そうか、島崎も生きてくれるか」成瀬の口角が自然に上がった。それを見たらなぜか泣きそうになり、両手で口元を押さえる。成瀬あかり史を一番長く見届けられるのはわたししかいない。いつまでもずっと、成瀬のそばで笑ったり泣いたりしていたい。成瀬は笑みを浮かべたままわたしに歩み寄ると、声をひそめて言った。「だがしかし、最近は二百年では足りないと思いはじめているところだ」わかしは思わず噴き出した。やっぱり成瀬は成瀬だった。「うん、いいよ。三百年でも四百年でも生きよう」わたしたちには四百万年を生きる琵琶湖がついている。成瀬はわたしの目を見つめ、何も言わずにうなずいた。
(琵琶湖の水は絶えずして)