あらすじ
『二十億光年の孤独』は、谷川が21歳の時に東京創元社より刊行された第一詩集で、作品は、谷川が17歳のときから執筆していた詩の一部を収録している。三好達治による序文がある。編集者の山田馨によれば、谷川俊太郎は高校を卒業後、大学に進学せずに模型飛行機づくりとラジオの組み立てと詩作の趣味に没頭していた。父親の谷川徹三に将来について問われ、詩を書いた2冊のノートを見せたところ、徹三は衝撃を受けて友人で詩人の三好達治の元にノートを送る。三好はノートから6編の詩を選び文芸雑誌『文學界』に推薦、1950年12月号に「ネロ 他五篇」として掲載された。その詩を読んだ雲井書店の社主が単行本として出版することを申し出て、50篇の詩を選んで紙型を用意するところまでいったものの会社が倒産、その紙型を徹三が買い取るかたちをとり、1952年6月に創元社から刊行された。


ひと言
谷川俊太郎さんが11月13日、老衰のためお亡くなりになりました。92歳でした。という訃報にふれ、図書館に設けられた谷川さんのコーナーでこの本を見つけました。遠い昔の学生時代、国語の授業で「二十億光年の孤独」を学習したのかもしれませんが、まったく記憶にありません。私が谷川俊太郎さんに触れたのは、2004年ネスカフェのTVのCMで流れた「朝のリレー」でした。なんて素敵な詩を書く人なんだろうと思い、その後、この「二十億光年の孤独」も読んだ記憶があります。この詩集には載っていませんが、自分が一番好きな「朝のリレー」も書き残させてもらいます。
本当に永い間お疲れ様でした。ゆっくりとお休みください。ご冥福をお祈りいたします。(合掌)


二十億光年の孤独   谷川俊太郎

人類は小さな球の上で
眠り起きそして働き
ときどき火星に仲間を欲しがつたりする

火星人は小さな球の上で
何をしてるか 僕は知らない
(或いは ネリリし キルルし ハララしているか)
しかしときどき地球に仲間を欲しがったりする
それはまつたくたしかなことだ

万有引力とは
ひき合う孤独の力である

宇宙はひずんでいる
それ故みんなはもとめ合う

宇宙はどんどん膨らんでゆく
それ故みんなは不安である

二十億光年の孤独に
僕は思わずくしやみをした





朝のリレー   谷川俊太郎

カムチャツカの若者がきりんの夢を見ているとき
メキシコの娘は朝もやの中でバスを待っている

ニューヨークの少女がほほえみながら寝返りをうつとき
ローマの少年は柱頭を染める朝陽にウインクする

この地球ではいつもどこかで朝がはじまっている

ぼくらは朝をリレーするのだ

経度から経度へと
そうしていわば交替で地球を守る

眠る前のひととき耳をすますと
どこか遠くで目覚時計のベルが鳴っている

それはあなたの送った朝を
誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ