あらすじ
神奈川県川崎市にあるチョーク製造会社・日本理化学工業株式会社は、昭和12年に小さな町工場からスタートした。昭和35年に二人の少女を雇い入れたことをきっかけに、障がい者雇用に力を注ぎ、「日本でいちばん大切にしたい会社」として全国から注目を集め続けている。現在も社員83名のうち、62名が知的障がい者。一人一人の能力に合った仕事を作ることで、彼らが製造ラインの主戦力となり、社員のほとんどは定年まで勤め上げる。同時に、彼らの作るダストレスチョークは業界シェア1位を誇る。
今でこそ福祉と経営の両面で注目を浴びるが、ここに辿り着くまでには数々の苦悩と葛藤があった。本書は、日本理化学工業の会長や社長、働く社員、さらには、普段語られることの少ない障がい者のご家族へのインタビューを通して、「働く幸せ」を伝える一冊。
ひと言
以前同じチョーク製造会社 日本理化学工業を紹介した「日本でいちばん大切にしたい会社」という本を読んで感銘を受けました。図書館でこの本を見つけて、すぐに借りました。以前の被るようなフレーズは除きましたが心に残る言葉がいっぱいでした。最近目が見えにくくなって、本から少し離れてきたように感じますが、こういう本と出会えるともっともっと読みたいなぁという気持ちにさせてくれます。ありがとう
「人間の幸せは働くことによって得られると、私は信じています。『経済』の意味をご存じですか。中国の古典に登場する言葉ですが、語源は『経世済民』です。文字通り『世を経め、民を済う』の意味なのですよ」富の獲得とは別な、本来の経済を実践したいと願った大山会長は、強い信念で理想とすべき社会の形を作り上げた。
「私が提唱しているのは『皆働社会』です。日本国憲法第13条には『すべての国民の幸福追求を最大限に尊重する』とあり、さらに第27条で『すべての国民ぽ勤労の権利と義務を負う』とある以上、重度障がい者だから福祉施設で一生面倒を見てもらえばいいというわけではありません。つまり、健常者が障がい者に寄り添って生きる『共生社会』ではなく、『皆働社会』なのです。そのことに気付いた私は、福祉施設改革による『皆慟社会』の実現を経営理念の一つにしました」
(序章)
工場の敷地内には彫刻家・松阪節三が日本理化学工業に寄贈した彫像「働く幸せの像」がある。その台には、大山会長の言葉が刻まれている。
《働く幸せ
導師は人間の究極の幸せは、大に愛されること、大にほめられること、人の役に立つこと、大から必要とされること、の四つと云われた。働くことによって愛以外の三つの幸せは得られるのだ。私はその愛までも得られると思う。
日本理化学工業株式会社
社長 大山泰弘 平成10年5月》
(第1章 日本でいちばん大切にしたい会社とよばれて)
「あるとき、福祉という漢字をそれぞれ漢和辞典で引いてみました。福と祉。二つとも示偏が付いていますが、これは神様が人間を幸せにする恵みを与えていることを表していると書いてありました。”福”という字は『神様が人間が生きていくうえで、食べていくのに困らない幸せ』を与えてくださっていることを表し、また”祉”という字は、止まると書いてありますが、これは『神様が人間の心に留まって、心を幸せにする』ことを表す言葉なのだそうです。人間の幸せは、物に不自由しない幸せと、心が満たされる幸せ、その二つが必要なのです」
(第4章 チョーク屋に生まれて)
