あらすじ
ひとは幸福になるために生きているけれど、幸福になるようにデザインされているわけではない。この社会にはきれいごとがあふれている。人間は誰しも平等で、努力すれば必ず報われ、〝見た目″はそれほど大した問題ではない――だが、それらは絵空事である。往々にして、努力は遺伝に勝てない。知能や学歴、年収、犯罪癖も例外ではなく、美人とブスの「美貌格差」は生涯で約3600万円もある。また、子育ての苦労や英才教育の多くは徒労に終わる……。進化論、遺伝学、脳科学の最新知見から、人気作家が次々と明かす「残酷すぎる真実」。読者諸氏、遺伝、見た目、教育、性に関する、口には出せない「不愉快な現実」を今こそ直視せよ!
(2017 新書大賞受賞)
ひと言
過激な内容もたくさんありましたが、「へぇ~ そんな見方もあるのか!」と驚いたり、おもしろく思ったり。新書大賞を取るだけのことはある本でした。
イギリスの経済学者ニック・ポータヴィーは、さまざまな「幸福」を金銭に換算している。それによると、家族と死別したときのかなしみを埋め合わせる賠償額は、配偶者が5000万円、子どもが2000万円に対し、きょうだいはわずか16万円で友人(130万円)よりも少ない(原著はポンド表示だが円建てに換算した)。幼いころは親しかったきょうだいも、齢を重ねるにつれて疎遠になっていく。絆の価値がたった16万円なら、相続が「争続」になるのも無理はない。
(4 進化がもたらす、残酷なレイプは防げるか)
ヒトの本性が乱婚だというきわめて説得力のある証拠のひとつが、男性器の構造だ。ヒトのペニスは乱婚のチンパンジーやボノボよりも長く、太く、先端にエラがついている。これまでの通説では、ペニスがこのような特徴的な形状を持つようになった理由をうまく説明できなかった。だがヒトのペニスの機能は、かんたんな実験で明らかになった。ペニスと同じかたちをしたものをゴムの管のなかで激しく動かすと、管のなかに真空状態が生じ、内部の液体が吸い出されるのだ。男性のペニスと性行動は、その特徴的なかたちとピストン運動によって、腔内に溜まっていた他の男の精液を除去し、その空隙に自分の精子を放出して真っ先に子宮に到達できるよう最適化されているのだ。
(10 女性はなぜエクスタシーで叫ぶのか?)
ヒトは社会的な生き物で、群れから排除されてしまえば生きていく術がない。古今東西、どんな社会でも「村八分」は死罪や流刑に次ぐ重罰とされた。これは子どもも同じで、「友だちの世界」から追放されることを極端に恐れる。勉強だけでなく、遊びでもファッションでも、子ども集団のルールが家庭でのしつけと衝突した場合、子どもが親のいうことをきくことはぜったいにない。どんな親もこのことは苦い経験として知っているだろうが、ハリスによってはじめてその理由が明らかになった。子どもが親に反抗するのは、そうしなければ仲間はずれにされ、「死んで」しまうからなのだ。親よりも「友だちの世界」のルールを優先することが子どもの本性だとすれば、「子どもはなぜ親のいうことをきかないのか」という疑問にはなんの意味もない。逆に不思議なのは、宗教や味覚のように「親のいうことをきく」ものが残っていることだ。これについてハリスは、「親が影響力を行使できる分野は、友だち関係のなかで興味の対象外になっているものだけだ」と考えた。特殊な場合を除いて、子どもたちは友だちの親の宗教に関心を持たない。同様に、豚肉やニンジンを食べないとしても、それだけで仲間はずれにされることもない。グループの「掟」は、食べ物の好き嫌いとは無関係なのだ。
(12 親子の語られざる真実)
