あらすじ
私たちは一人じゃない。これからもずっと、ずっと  愛するものの喪失と再生を描く、感動の物語。幸せな恋愛、結婚だった。これからも幸せな出産、子育てが続く……はずだった。順風満帆に「普通」の幸福を謳歌していた森崎青子に訪れた思いがけない転機 ―― 娘の死から、彼女の人生は暗転した。離婚、職場での理不尽、「普通」からはみ出した者への周囲の無理解。「再生」を期し、もがけばもがくほど、亡くした者への愛は溢れ、「普通」は遠ざかり……。

ひと言
今日、第166回の直木賞が発表になりました。今村翔吾さんの「塞王の楯」と米澤穂信さんの「黒牢城」が受賞。この作品も候補作に入っていたのですが残念。でもとてもいい作品でした。

「……。なんかね、わかったんだよ。私が変えられるのは自分の運命だけなんだ。子供の運命はそれかどんなものであっても、その子が一人で背負うしかない。親ができるのは、それを全うする姿を褒める……褒めるっていうか、もう、敬意を持つとか、そんな感じだよね。うん、私はなぎさに、敬意を持ってる。あとは自分が、自分の運命をなんとかする姿を、見てもらうぐらい……」菜緒ちゃんは大丈夫だよ、と青子は続けた。「しっかりした子だよ。茅乃がずっと長生きするって信じてる。でも、もし万が一離れざるを得なくなっても、あの子は毎日ちゃんと生活して、育って、大人になるよ。なんにもかわいそうじゃない」
(月がふたつ)

「安堂さん、私のお母さんが私に約束して、でもぜんぜん叶えてくれなかったこと、いっぱいあるんです。弟妹を作れなかった代わりに小学生になったら猫を飼わせてあげるとか、私の結婚式を見るまで死なないとか。できない約束ばかりして、やっぱりひどい人だったのかなって思います。でも、一つだけ、ちゃんと本当になった」意味がわからず、玄也は首を傾げた。菜緒はじわりと口角を持ち上げる。「あなたは生涯を通じてけっして一人にはならない、って。何回も、念を押すみたいに言ってた。あの人の言うことを、本当にしてくれてありがとう」照れくさそうに手を振って、菜緒は駅の構内へ吸い込まれていった。
(ぼくの銀河)