あらすじ
二匹のアマガエルがたどり着いた夢の楽園は悲劇的な末路を迎えたはずだったが、悪夢の翌朝、二匹はなぜか再び平和な地にいた。今度の世界では、ウシガエルの国で「新しい病気」が流行っていたが、楽園のカエルたちは根拠なき楽観視を続ける。しかし、やがて楽園でも病気が広がり始め…。国難を前に迷走する政府やメディアの愚かさを浮き彫りにし、三通りの結末を提示する、警告と希望の書。

ひと言
面白く読ませてもらいました。読んでいて、これは誰のことだなとすぐわかるものもあれば、先に予習をしておかないと誰のことかわからないというものもあり、以下にまとめておきました。
スチームボート=アメリカ、ナパージュ=日本、南の沼=中国、エンエンの国=韓国、西の国=ヨーロッパ、ウシガエルの沼の東にある小さな池=台湾、南の崖=尖閣諸島、ツチガエル=日本人、ウシガエル=中国人、ヌマガエル=韓国人、ハンドレッド=百田尚樹、プロメテウス=安倍首相、ハードテイク=石破茂、ツーステップ=二階俊博、ハインツ=立憲民主党の福山幹事長、デイブレイク=朝日新聞、マイク=メディア(新聞やテレビ)、イエストール=高須克弥、ハンニバル・ワグルラ・ゴヤスレイの三兄弟=自衛隊、エコノミン=経済学者 経済評論家、ガルディアン=立憲民主党の枝野幸男代表、ナエ=左翼、フリーダム=右翼、ディーアール=医者、三戒=憲法9条、チェリー広場=桜を見る会、水仙の花=マスク、プランタン=村上春樹、スモールグリーン=小池百合子 etc……。
このブログを書いている9月4日現在で、自民党の総裁選は、ほぼ菅 義偉 官房長官で決まり。菅さんが出馬を決めたのは二階 俊博 幹事長の後ろ盾があったから……。現在の政治から二階さんを外すことは到底できないのだけれど、対中政策はどうなるんだろうと思ってしまいます。それにしても一日も早いコロナの収束を心より祈っています。


「お前たちは、ずっと移動しなかったら、ウシガエル病がなくなると本気で思っているのか?」「そりゃあ、いつかなくなるでしょう」ロベルトは言いました。「たしかにどのカエルも、他のカエルに一切近寄らないで、ずっと過ごせば、誰もウシガエル病には罹らないですむだろう。そうしたら、この病気もいつかはなくなるかもしれん。しかしカエル同士がまったく触れ合わないで生きていけると思うか」 ロベルトは何か言い返そうとしましたが、言葉が出ませんでした。「そう、無理なんだ。生きている限り、誰かと触れ合う。もし、触れ合うことが無理なら、オスガエルとメスガエルが結ばれることもない。触れ合うことが無理なら、生まれた子供と遊ぶこともできない。つまりだ。一切、ウシガエル病にかからないように生きていくのは土台無理なんだ」「でも、触れ合う機会を少なくすれば、病気に罹るカエルも少なくなるでしょう」「カエル同士が離れて生きるとなれば、生きていくのは大変だ。満足にハエも取れず、ずっと腹をすかして生きていくことになる」「じゃあ、どうすればいいんですか」「病気に罹るのを覚悟して、前みたいに生きていくしかない」「ええっ!」ロベルトは驚きの声を上げました。ソクラテスもこれには驚きました。さすがにそれは無茶すぎる意見だと思ったからです。「ウシガエル病がナパージュに入ってくる前、あるいは入ってすぐの頃は、それがどれくらい恐ろしい病気かわからなかった。しかし実際、ウシガエル病が入ってきて何日か経ってわかったことは、この病気に罹って死ぬのは年老いたカエルがほとんどだということだ。若いカエルや子供はほとんど罹らない。万が一罹っても、大変なことになる例はごく僅かだ。それがわかった。このことはお前たちも知っているな」 「はい」「ほっといてももうすぐ死ぬ年寄りのカエルのために、若いカエルが皆、腹を減らしてどうするんだ」「あなたは、年老いたカエルは死んでもいいと思っているんですか!」「誰もそんなことは言っていない。まあ、少し落ち着け。話を勝手に解釈するな」「でも、あなたが言うように、移動を自由にすれば、年老いたカエルが病気に罹る率が増えるじゃないですか」「それでは聞くが」ハンドレッドは言いました。「いつまで移動の自由を制限すればいいんだ?」「マイクが言っていたように、病気になるカエルが少なくなってからじゃないですか」とロベルトが答えました。「どれくらいだ?」「―― 半分くらい?」「ほお、それで半分くらいになったところで、移動を自由にすれば、また増えるかもしれないじゃないか」ロペルトは少し困ったような顔をしました。「じゃあ、三分の一くらい?」「三分の一まで減れば、移動を自由にしても病気は増えないのか?」ロペルトは黙ってしまいました。わかったか。つまりはそういうことなんだ。移動の自由を止めて病気が少なくなっても、それは触れ合う機会が少ないからであって、移動するカエルが増えれば、また増える。そういう論理でいけば、いつまで経っても移動を自由にできないということになる」 「じゃあ、ハンドレッドさんは、移動を自由にするのはいつがいいと思ってるんですか?」ロベルトは怒ったように訊きました。「今から、やればいいんだ」ソクラテスはこの返事には驚きました。いくら何でも今、移動の自由を認めたら、大変なことになると思ったからです。「でもな、残念なことに、誰もそんな決定は下せない。お前たちはこの国がどんな国か知らないだろうが、ナパージュという国はな ―― 動くのが遅くて、止まるのも遅いんだ」ソクラテスはなるほどと思いました。そうかもしれない。

(第三章)