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あらすじ
この本には、「日本感動大賞第5回」に寄せられた本当にあった20篇の感動的な物語が収められています。どの物語にも、家族や友人など、大切な人を想う気持ちがあふれています。生きていれば誰だって、迷ったり、落ち込むことがあります。そんなとき、この本に収められた物語を思い出してください。困ったときには、きっと誰かがあなたを助けてくれます。きっと、あなたをやさしく励ましてくれるはずです。

 

ひと言
今年の締め括りの一冊は何にしようと図書館で悩んでいたとき、この本を見つけました。今年もいろいろなことがあって、多くの人やたくさんの本に勇気をもらって…、いっぱいのありがとうを思い出しながら読みました。
すぐに忘れそうになるこの言葉をこれからも忘れないように…。感謝の気持ちを忘れないように…。
2015年 今年1年ほんとうにありがとうございました。
2016年 来年も素敵な1年になりますように☆

 

 

祐司が七歳になった年、父の肺と膀胱にまたもやガンが見つかりました。第二の人生をスタートさせてから十五年目のことでした。六十四歳の父は、十五年前のように「まだ死ねない」と頑張る気力がありません。私たちの前ではいつものように明るく振る舞っていましたが、母と二人きりになると「もう、まいね(ダメ)じゃあ……」と落ち込むのです。入院したため、祐司と毎日顔を合わすこともできません。だから、余計に元気をなくしたのでしょう。そんな父を心配した母が「祐司に電話をかけてみたら?」と勧めました。登校前の短い時間でしたが、父と祐司は久しぶりに楽しくお喋りをしました。祐司が登校する時間になり、父は家にいるときのように「忘れ物はないか? 車に気を付けるんだぞ」と注意をして、「じゃあ、さようなら」と電話を切ろうとしました。それを聞いた祐司が、泣きそうな声をあげたのです。「待って! ジジ! ジジとはもう会えないの?」「いや、会えるよ」祐司が何故そんなことを言いだしたのかわからず、困惑しながら答えた父に、祐司は怒ったように言いました。「じゃあ、『さようなら』はおかしいよ! 『さようなら』はもう会わない人に言うんだよ!」じゃあ――なんて言うんだ?」「またね、だよ」その言葉に、父はハッとしました。「そうか、またね、か!」「そうだよ! じゃあ……またね!」元気のいい「またね」を聞いて電話を切った父は、ボロボロと涙をこぼしました。またね、という言葉に、また会いたいという孫の想いを感じ取ったのです。同時に、自分にはまだ未来があるのだという希望も。諦めてはいけない。元気になって、また祐司のところに戻るのだ――。そう決意した父に再び頑張る力が湧いてきました。「またね」という言葉が父に勇気と希望を与えたのです。
(父の宝物)