あらすじ
海沿いの町で、なぜか高い杉の木のてっぺんに引っかかっているというDJ(ディスク・ジョッキー)アークがパーソナリティをつとめる番組「想像ラジオ」。彼は「想像」という電波を使って、「あなたの想像力の中」だけで聞こえるラジオ放送を続けている。リスナーから次々に届くメールを読み上げ、饒舌におしゃべりを続けるアークだったが、彼にはどうしても聞きたい、ひとつの〈声〉があった。
(2014年本屋大賞 8位)
海沿いの町で、なぜか高い杉の木のてっぺんに引っかかっているというDJ(ディスク・ジョッキー)アークがパーソナリティをつとめる番組「想像ラジオ」。彼は「想像」という電波を使って、「あなたの想像力の中」だけで聞こえるラジオ放送を続けている。リスナーから次々に届くメールを読み上げ、饒舌におしゃべりを続けるアークだったが、彼にはどうしても聞きたい、ひとつの〈声〉があった。
(2014年本屋大賞 8位)
ひと言
「魂魄(こんぱく)この世にとどまりて」突然の地震と津波で命を失い、思い残すことがあってこの世にとどまる魂を表した言葉です。その魂が いかにしてあの世へ向かうことが出来るのでしょうか? 今、私たちが亡くなった人々にできることとは何でしょうか? そのことを問いかけてくる本です。
ただ、この本の作者の感性に合う人もいれば、合わない人もいる本のように思いました。
東日本大震災だけにとどまらず、いろいろな死に向かいあったときに 私たちにできること、それは亡くなった人々のことを忘れないようにすることです。そうすれば亡くなった人はその人の心の中にずっと生き続けることができるのですから。
「魂魄(こんぱく)この世にとどまりて」突然の地震と津波で命を失い、思い残すことがあってこの世にとどまる魂を表した言葉です。その魂が いかにしてあの世へ向かうことが出来るのでしょうか? 今、私たちが亡くなった人々にできることとは何でしょうか? そのことを問いかけてくる本です。
ただ、この本の作者の感性に合う人もいれば、合わない人もいる本のように思いました。
東日本大震災だけにとどまらず、いろいろな死に向かいあったときに 私たちにできること、それは亡くなった人々のことを忘れないようにすることです。そうすれば亡くなった人はその人の心の中にずっと生き続けることができるのですから。
父が入院してからのニケ月、私はそれまでほとんど帰ることのなかった郷里を出来る限り頻繁に訪れ、父を見舞った。怒濤の、と言いたい早さと勢いで癌は父の体中に散り、脊髄に沿って点々と飛び火し、絶え間なく行軍し、おかげで父は歩けなくなった。
女性看護師と私や母が抱いて車椅子に乗せて、トイレに連れていった。帰りに、父は車椅子から自力でベッドに戻りたがった。一ケ月ほどするうちに、父は両手を肘かけに突っ張って思い切り 力を入れても うまく立ち上がることが出来なくなった。父は顔をしかめてぶるぶる震えたが、尻がほんの少し椅子から離れるばかりだった。助けようとすると首を横に振った。
ある日、父はとうとう顎を肘かけにつけ、歯を食いしばった。顎の力で椅子から離れようとしたのだった。悲鳴のようなものが父の喉から出た。私は助けたかったが、手を貸せば父のプライドに傷がつくと思った。しかし、いつまでもそのままにしておけば、父は自分の無力を私の前で認めざるを得なかった。ぎりぎりの瞬間、私は無意識に手を出して父の背中を抱いていた。いつの間にそばに来ていたのか、
若い女性看護師はその私より一瞬早く、肩を父の左脇に入れていた。そして徹底的に職業的な素振りで父を立たせ、はい、ベッドに移ってくださーいと、まるで父が自分の意志で移動しているかのように言った。
私はその人に黙って頭を下げた。(第二章)
女性看護師と私や母が抱いて車椅子に乗せて、トイレに連れていった。帰りに、父は車椅子から自力でベッドに戻りたがった。一ケ月ほどするうちに、父は両手を肘かけに突っ張って思い切り 力を入れても うまく立ち上がることが出来なくなった。父は顔をしかめてぶるぶる震えたが、尻がほんの少し椅子から離れるばかりだった。助けようとすると首を横に振った。
ある日、父はとうとう顎を肘かけにつけ、歯を食いしばった。顎の力で椅子から離れようとしたのだった。悲鳴のようなものが父の喉から出た。私は助けたかったが、手を貸せば父のプライドに傷がつくと思った。しかし、いつまでもそのままにしておけば、父は自分の無力を私の前で認めざるを得なかった。ぎりぎりの瞬間、私は無意識に手を出して父の背中を抱いていた。いつの間にそばに来ていたのか、
若い女性看護師はその私より一瞬早く、肩を父の左脇に入れていた。そして徹底的に職業的な素振りで父を立たせ、はい、ベッドに移ってくださーいと、まるで父が自分の意志で移動しているかのように言った。
私はその人に黙って頭を下げた。(第二章)