『メトロ怪談』(田辺青蛙、中山市朗、正木信太郎 竹書房 怪談文庫)

 

田辺青蛙さんが大好きなので、「……メトロかぁ。鉄道よくわかんないんだけどな」と思いつつも購入。

 

実際に読んでみると、地下鉄とか電車の話だけではなく、駅周辺地の怪談なんかもありました。

 

最後に掲載されている「空襲時に現れた幽霊地下鉄」の話。

これ、私も聞いたことがあるのですが……。まさかちゃんとした実話だったとは思いませんでした。

詳細は本を買って読んでいただくとして……。

しかし。

しかし、ですよ? この第一次大阪空襲。

いまでは(というか欧州ではやっていない)やってはいけないといわれる焼夷弾を使ったじゅうたん爆撃やうずまき型の攻撃をしています。

民間人の退路を断って、一か所に追い込み、一気に爆弾を落とすんです。

こんなのされたの、日本ぐらいですよ。

 

ふつふつと怒りは沸き上がりますが……。まあ、おいといて。

 

私は前職の時、被爆者の方や傷痍軍人さんと一緒に活動することもたくさんありました。

戦時中の体験として、よく聞いたのは「幽霊話」です。

正確には戦時中、ではなく、戦後の幽霊話、でしょうか。

 

「◎◎さん家にもの言いたげな女の幽霊が出た」「ああ、それは亡くなった奥さんちゃうか。ほら、乳飲み子を残して亡くならはったから」「ええ奥さんやったさかいなぁ」

 

そんな風に語られ、それを聞いた子どもは、「ああ、お母さんはいないけど、ぼくをいまでも見守ってくれている」と思って育つ。

怪談を通じて、亡くなった人のひととなりを知り、それによって生きているものは力づけられる。

そんな風に感じたことを思い出しました。